CFDI取消・代替発行の現場対応|期限・理由コード・再発行フロー
はじめに
CFDI(電子請求書)は、発行後に誤りが判明した場合や取引が成立しなかった場合等に「取消(cancelación)」を行うことができます。現行制度では取消に際して受領者側の承認手続が必要になる場合があり、期限や理由コードの選び方を誤ると、税務上の証憑管理に混乱が生じます。本記事では、CFDI取消・代替発行の実務上の流れを、駐在員・現地経理担当者向けに整理します。
この記事のポイント
- CFDIの取消には、発行者が単独で行えるケースと、受領者の承諾(アセプタシオン)を要するケースがあり、後者では受領者に一定期間内の回答が求められる仕組みになっている。
- 取消の際は、SATが定める「理由コード(Motivo de cancelación)」(誤りのある関連CFDIあり/誤りのある関連CFDIなし/取引不成立/グローバル請求書への計上替え等)から該当するものを選択する必要がある。
- CFDIの取消には期限があり、原則として、そのCFDIが発行された年度の年次所得税申告(declaración anual de ISR)の提出期限が属する月まで取消を行うことができる(CFF第29-A条)。
- 誤りを訂正して再発行する場合は、新しいCFDIに「関連CFDI(CFDI relacionado)」として旧CFDIのUUIDを紐づけ、代替・置換であることを明示する運用が一般的である。
- 受領側としては、取消依頼が来た際に、実際の取引実態を確認した上で承諾・拒否を判断し、既に仕訳計上済みの場合は訂正処理を行う必要がある。
取消・再発行フロー サマリー表
| 場面 | 対応 | 主な確認ポイント |
|---|---|---|
| 発行側の誤り判明 | 理由コードを選択し取消依頼 | 該当する理由コードの選択 |
| 受領者への通知 | 受領者に承諾可否の回答を求める | 期限内の回答(承諾・拒否) |
| 取消確定 | SATシステム上でCancelado表示に | ステータス確認 |
| 再発行 | 正しい内容で新CFDIを発行 | 旧CFDIとの関連付け(Sustitución) |
| 会計処理 | 誤った仕訳の訂正・新CFDIでの計上 | 訂正仕訳の記録 |
CFDI取消・代替発行の基本的な仕組み
取消が必要になる主な場面
CFDIの取消が必要になる典型的な場面としては、金額や品目等の記載誤り、取引そのものが成立しなかった場合、重複発行等が挙げられます。誤りの内容によって、単純に取り消すだけでよいケースと、正しいCFDIを再発行する(代替する)必要があるケースに分かれます。
理由コード(Motivo de cancelación)の選択
CFDIを取り消す際は、SATが定める理由コードの中から該当するものを選択する必要があります。理由コードには、次のようなパターンがあります。誤りがあり関連する(代替となる)CFDIを新たに発行する場合、誤りはあるが関連するCFDIを発行しない場合、そもそも取引が行われなかった場合、日次・月次等のグローバル請求書(factura global)に取引を計上し直す場合等です。
SATの画面上の表示名と日本語の意味は、次のとおりです。
| コード | SAT表示名(スペイン語) | 意味 |
|---|---|---|
| 01 | Comprobante emitido con errores con relación | 誤りがあり、関連するCFDIがある場合 |
| 02 | Comprobante emitido con errores sin relación | 誤りがあり、関連するCFDIがない場合 |
| 03 | No se llevó a cabo la operación | 取引が実施されなかった場合 |
| 04 | Operación nominativa relacionada en una factura global | グローバル請求書に含まれる記名取引の場合 |
受領者の承諾手続
一定の条件に該当するCFDIについては、発行者が取消を行う際に、受領者側の承諾を得る必要があります。発行者が取消を申請すると、税務メールボックス(Buzón Tributario)を通じて受領者に承諾可否の回答を求める通知が送られます。受領者が3営業日以内に回答しない場合は、取消が自動的に承諾されたものとして扱われる仕組みになっています。ただし、RMF 2026規則2.7.1.35に基づき、受領者の承諾なしに取消が可能な例外があります。具体的には、総額1,000ペソ以下のCFDI(CFDI de pagos(REP)等を除く)、給与(nómina)のCFDI、egreso(減額)のCFDI、発行後の翌営業日中に行う取消、支払情報(retenciones e información de pagos)のCFDI等です。また、実際の対応時は、RMF(規則2.7.1.35)の最新版で例外の要件を確認することが望ましいといえます。
取消の期限
CFDIの取消には期限があり、原則として、そのCFDIが発行された年度の年次所得税申告(declaración anual de ISR)の提出期限が属する月まで取消を行うことができます(CFF第29-A条)。期限を過ぎてしまった場合、通常の手続では取消ができなくなるため、誤りに気づいた時点で速やかに対応することが望ましいといえます。
代替CFDIの発行(再発行フロー)
CFDI取消・代替発行では、誤りを訂正して新しいCFDIを発行する場合、新CFDIの「関連CFDI(CFDI relacionado)」欄に、取り消した旧CFDIのUUIDを記載します。関連の種類には「代替(Sustitución de los CFDI previos)」を選択し、旧CFDIとの紐づけを明示します。これにより、税務当局・取引先の双方が、どのCFDIがどのCFDIを置き換えたものかを追跡できるようになります。
受領側の実務対応
取消依頼を受けた際の確認事項
取消の承諾を求める通知を受け取った場合は、まず実際の取引が本当に成立していなかったのか、あるいは記載内容に誤りがあったのか等、取引の実態を確認します。既に仕入・経費として計上済みの場合、取消に応じることでその後の会計処理・税務申告に影響が生じるため、慎重に判断する必要があります。
会計処理への反映
取消が確定した場合、既に計上済みの仕訳があれば訂正処理を行い、代替CFDIが発行された場合はその内容に基づいて改めて仕訳を計上します。取消前後のCFDI(旧・新)はいずれも証拠書類として保管し、取消・代替の経緯が後から追跡できるようにしておくことが望ましいといえます。
よくある誤解と正しい理解
- 誤解:CFDIは発行者の判断だけで、いつでも自由に取り消せる。
正解:一定の条件に該当するCFDIは、受領者の承諾を要する仕組みになっており、発行者が単独で取り消せるとは限らない。 - 誤解:CFDIの取消に期限はなく、いつでも取り消せる。
正解:原則として、そのCFDIが発行された年度の年次確定申告の提出期限までという期限があり、これを過ぎると通常の手続では取消ができなくなる。 - 誤解:誤ったCFDIを取り消せば、それだけで対応完了である。
正解:取消後に正しい内容のCFDIを代替として発行し、旧CFDIとの関連付けを行うとともに、会計処理の訂正も行う必要がある。
実務FAQ
Q. 取消依頼に一定期間内に回答しなかった場合はどうなるか。
A. 税務メールボックスでの通知後3営業日以内に回答しない場合、取消は自動的に承諾されたものとして扱われます。取消依頼が来た際は放置せず、速やかに実態を確認して回答することが重要です。
Q. 受領者の承諾が不要なケースにはどのようなものがあるか。
A. 次のような例外に該当する場合は、受領者の承諾を経ずに取消が可能とされています(RMF 2026 規則2.7.1.35)。総額1,000ペソ以下のCFDI(CFDI de pagos(REP)等を除く)、給与(nómina)のCFDI、発行後の翌営業日中に行う取消等が該当します。判断に迷う場合は都度最新のRMF(規則2.7.1.35)を確認することが望ましいといえます。
Q. 代替CFDIが発行されないまま取消だけが行われた場合、会計処理はどうすればよいか。
A. 取引が実際には成立していなかったことが確認できれば、計上済みの仕訳を取り消す(reversal)処理を行います。取引自体は実在するが誤りがあっただけの場合は、代替CFDIの発行を取引先に依頼することが望ましいといえます。
実務チェックリスト
- 取消の理由(誤記載・取引不成立・重複発行等)を明確にしたか
- 該当する理由コードを正しく選択したか
- 受領者の承諾が必要なケースかどうかを確認したか
- 取消の期限(年次確定申告の提出期限)内に対応しているか
- 代替CFDIを発行する場合、旧CFDIとの関連付け(Sustitución)を行ったか
- 取消・代替の経緯が分かるよう、旧CFDI・新CFDIの両方を保管しているか
- 会計処理(訂正仕訳・新CFDIでの計上)を反映したか
まとめ
CFDIの取消・代替発行は、単に取り消すだけでは完結しません。理由コードの選択、受領者の承諾手続、期限管理、代替CFDIの関連付け、会計処理への反映まで、一連のプロセスとして対応する必要があります。誤りに気づいた時点で速やかに、かつ手順に沿って対応することが、税務調査に耐えうる証憑管理につながります。
本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
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リソース
- SAT(税務庁)公式サイト・CFDI取消関連ガイダンス
- 連邦税法(CFF)第29-A条
