DIOTレポート作成の実務|仕入税額按分・取引先分類・検証手順
はじめに
DIOT(Declaración Informativa de Operaciones con Terceros:第三者取引に関する情報申告)は、企業が仕入先等の第三者との取引を月次でSATに報告する情報申告です。実際の納税額を確定させるものではないものの、提出を怠ると罰則の対象となります。2025年8月以降、DIOTはSATの新オンラインプラットフォームでのみ提出可能となりました。受領CFDIのデータをもとに申告内容が自動転記されるとともに、取引先が発行したCFDIとの自動突合がSAT側で行われる仕組みに変わっています。この結果、報告内容とCFDIデータとの齟齬は、以前にも増して当局からの照会に直結しやすくなっています。本記事では、DIOTレポート作成の実務を、駐在員・現地経理担当者向けに整理します。
この記事のポイント
- DIOTは、企業が支払ったIVA(付加価値税)について、取引先(第三者)ごとの内訳を月次でSATに報告する情報申告であり、納税そのものではないが、提出を怠ると過料(CFF第81条・第82条に基づく行政罰金)の対象となる。
- 2025年8月以降、DIOTはSATの新オンラインプラットフォームでのみ提出可能となり、旧来のデスクトップ提出ソフトは廃止された。新プラットフォームは受領CFDIのデータを自動転記し、取引先が発行したCFDIとの自動突合を行う仕組みが導入されている。差異があると、正式な調査手続ではないものの、SATから招待状(carta invitación)が送付され、是正を求められる可能性が高まっている。
- DIOTでは、取引先を「国内仕入先」「海外仕入先」等の類型に分類し、それぞれのRFC(または海外取引先の場合は識別情報)、支払金額、控除対象となるIVA額等を記載する必要がある。
- 課税取引と非課税・免税取引が混在する事業を行っている企業は、仕入税額(IVA acreditable)を按分(prorrateo、LIVA第5条フラクションV・第5条の2等に基づく)して計算する必要がある場合があり、按分方法を誤ると控除額の計算に誤りが生じる。
- SAT側で自動突合が行われる制度になったからこそ、提出前に自社の会計データとCFDIの記載内容を突合し、取引先分類・金額に齟齬がないかを検証しておく重要性はむしろ高まっている。
DIOT作成フロー サマリー表
| ステップ | 内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| ①データ収集 | 対象期間の仕入CFDI・支払データを収集 | 期間の範囲、抜け漏れの有無 |
| ②取引先分類 | 国内・海外等、取引先の類型を判定 | 分類コードの正確性 |
| ③金額集計・按分 | 取引先ごとのIVA額を集計、必要に応じ按分 | 課税・非課税取引の区分 |
| ④突合検証 | 会計データとCFDIデータを突合(SAT側でも自動突合が行われる) | 金額・件数の一致 |
| ⑤提出 | 新オンラインプラットフォームで期限内に提出 | 提出期限の管理 |
DIOTの基本的な仕組み
DIOTとは何か
DIOTは、企業が仕入先等の第三者に支払った金額とそれに係るIVAの内訳を、月次でSATに報告する情報申告です。実際の税額を確定させる申告(IVA申告)とは別の、情報提供を目的とした申告である点が特徴です(提出義務の法的根拠はLIVA第32条)。
新オンラインプラットフォームへの移行と自動突合
2025年8月以降、DIOTの提出は旧来のデスクトップ提出ソフトが廃止されました。SATの新オンラインプラットフォームでのみ、提出を行う形に変わっています。新プラットフォームでは、企業が受領したCFDIのデータをもとに申告内容の一部が自動的に転記されます。さらにSAT側では、報告された取引先が実際に発行しているCFDIとの自動突合(cruce automático)も行われます。突合の結果に差異があれば、正式な調査手続ではないものの、SATから招待状(carta invitación)が送付され、是正を求められる可能性があります。重大な不備が続く場合は、重点監視の対象となることや、CFDI発行用の電子署名証明書(CSD)の停止・取消につながることもあります。そのため、提出前の自社データの精度がこれまで以上に重要になっています。
提出義務と罰則
DIOTの提出は法令上の義務であり、提出を怠ったり、期限に遅れたりした場合は、連邦税法(CFF)第81条・第82条に基づく過料(行政罰金)の対象となります。納税額に直接影響しない情報申告であっても、提出義務自体は軽視できません。
取引先の分類と仕入税額の按分
取引先の分類
DIOTでは、取引先を国内仕入先・海外仕入先等の類型に分類し、それぞれのRFC(または海外取引先を識別する情報)、支払金額、IVA額等を記載します。分類を誤ると、報告内容とSAT側の記録(CFDIデータ等)との間に齟齬が生じ、前述の自動突合で照会の対象となる可能性があります。
仕入税額の按分(プロラテオ)
課税取引と非課税・免税取引が混在する事業を行っている企業では、双方に共通して使用される費用に係るIVAについて按分(prorrateo)する必要がある場合があります。按分の法的根拠はLIVA第5条フラクションV・第5条の2等であり、課税取引の割合に応じて控除額を計算します。按分方法・計算基礎を誤ると、控除額全体の計算に誤りが生じるため、按分が必要な費用の範囲をあらかじめ整理しておくことが望ましいといえます。
提出前の検証手順
会計データとCFDIデータの突合
DIOTを提出する前に、会計システム上の仕入データと、実際に受領したCFDIの記載内容を突合し、取引先の分類・金額に齟齬がないかを確認することが望ましいといえます。SAT側でも自動突合が行われる制度になったため、この事前確認を怠ると、提出後にSATからの照会という形で不備が顕在化するリスクが高まります。
提出スケジュールの管理
DIOTの提出期限は、月次のIVA申告と同様のスケジュールに沿って管理する必要があります。申告実務全体のカレンダーにDIOTの提出期限も組み込み、担当者が変わっても提出漏れが生じないようにしておくことが重要です。
よくある誤解と正しい理解
- 誤解:DIOTは単なる情報申告なので、多少の誤りがあっても実害はない。
正解:情報申告であっても提出義務・期限を守らなければ過料の対象となり、また新プラットフォームによるSAT側の自動突合により、報告内容とCFDIデータとの齟齬は当局からの照会に直結しやすくなっている。 - 誤解:仕入税額の按分は、非課税取引を行っている企業には関係のない話である。
正解:課税取引と非課税・免除取引が混在する事業を行っている企業では、共通費用に係るIVAの按分計算が必要になる場合がある。 - 誤解:DIOTのデータはCFDIから自動的に生成されるため、提出前の確認は不要である。
正解:新プラットフォームによる自動転記が導入された後も、会計処理上の分類や按分計算等、CFDIデータのみでは自動的に反映されない要素があるため、提出前の突合・確認が必要である。
実務FAQ
Q. DIOTの提出を忘れた場合、どうなるか。
A. 提出義務違反として過料の対象となる可能性があるため、気づいた時点で速やかに提出し、必要に応じて専門家に相談することが望ましいといえます。
Q. 仕入税額の按分が必要かどうか、どう判断すればよいか。
A. 自社の事業に非課税・免税取引が含まれているか、共通費用(按分対象となる費用)がどの範囲かを確認してください。判断に迷う場合は、税務アドバイザーに相談することが望ましいといえます。
Q. DIOTと会計データに齟齬がある場合、どちらを優先すべきか。
A. まず齟齬の原因(分類誤り、集計漏れ等)を特定し、正確な実態に基づいて修正することが基本です。原因が不明な場合は、専門家に確認することが望ましいといえます。
Q. 新プラットフォームでSATから招待状(carta invitación)が来た場合、どう対応すればよいか。
A. まず自社データとCFDIデータを再度突合し、齟齬の原因(分類誤り、按分計算の誤り、相手方の記載誤り等)を特定することが必要です。招待状自体に法定の回答期限はありませんが、放置すると正式な税務調査に発展する可能性があるため、早期に是正・回答することが望ましいといえます。原因の切り分けが難しい場合は、専門家に相談することが望ましいといえます。
実務チェックリスト
- 対象期間の仕入CFDI・支払データを漏れなく収集したか
- 取引先の分類(国内・海外等)を正しく行ったか
- 課税・非課税取引が混在する場合、仕入税額の按分計算を行ったか
- 会計データとCFDIデータを突合し、齟齬がないか確認したか
- 新オンラインプラットフォームで提出期限を申告カレンダーに組み込み、管理しているか
- 過去の提出内容との整合性(分類基準の一貫性等)を確認したか
- SATから招待状(carta invitación)が来た場合の対応手順を社内で確認しているか
まとめ
DIOTは情報申告であるものの、提出義務・期限を軽視すると罰則の対象となります。2025年8月以降はSAT側での自動突合により、報告内容の齟齬が当局からの照会に直結しやすくなっています。取引先の分類、仕入税額の按分、会計データとの突合という一連の作業を月次の定型業務として組み込んでおくことが、実務に定着するDIOT作成につながります。
本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
関連記事
- CFDI受領から仕訳まで|XML検証・税率確認・保管手順
- 仕入税額控除のためのCFDI要件確認|必須項目と差戻し基準
- 電子会計(Contabilidad Electrónica)の概要と提出方法
リソース
- 付加価値税法(LIVA)第32条(DIOT提出義務)
- 付加価値税法(LIVA)第5条・第5条の2(仕入税額の按分=プロラテオ)
