仕入税額控除のためのCFDI要件確認|必須項目と差戻し基準
はじめに
CFDIがSATの検証サービスで有効(Vigente)と確認できたとしても、それだけでIVA(付加価値税)の仕入税額控除が自動的に認められるわけではありません。具体的には、控除のために、付加価値税法(LIVA)が定める実体要件と、CFDIの記載項目としての形式要件の両方を満たす必要があります。本記事では、仕入税額控除のためのCFDI要件確認の方法と、受領時に取引先へ差し戻すべき基準を、駐在員・現地経理担当者向けに整理します。
この記事のポイント
- IVA仕入税額控除(acreditamiento)のためには、CFDIが単に有効(Vigente)であるだけでなく、LIVA(付加価値税法)第5条が定める実体要件(①事業に不可欠な支出であること、②IVAが別建てで明記されていること、③対価の支払が完了していること、④源泉徴収義務がある取引では源泉徴収したIVAを期限内に納付していること等)を満たす必要がある。
- CFF第29-A条・SAT附属書20(Anexo 20)は、CFDIに記載すべき必須項目(発行者・受領者のRFC、受領者の郵便番号・税制区分、品目・数量・単価、IVA別建て記載、支払方法・決済方法コード、CFDIの使用目的等)を定めており、これらの欠落・誤りがあるCFDIは、控除の否認や訂正の手間につながる。
- CFDI4.0以降、受領者の郵便番号(código postal、CFF第29-A条に明記)と税制区分(Régimen Fiscal、Anexo 20の技術仕様上の必須項目)の記載が求められており、この記載漏れ・誤りは実務上頻発する差戻し理由の一つである。ただし、これらの不一致は多くの場合PACによる発行(timbrado)段階でエラーとなり発行自体ができないため、受領後に不一致が発覚するケースは限定的である。
- 2026年1月施行のCFF改正により、CFDIは実在する取引を証憑するものでなければならず、これを満たさないCFDIは偽造(falso)とみなされる旨が明記された。形式要件を満たすだけでなく、取引の実在性を裏付ける資料(契約書・納品書等)も備えておくことが重要である(前回No.204のEFOS真正性検証とも関連する論点)。
- 受領したCFDIに不備がある場合は、仕訳計上前に取引先へ差戻し・訂正を依頼することが望ましく、計上後に発覚すると訂正の手間が大きくなる。
仕入税額控除要件チェック フロー サマリー表
| チェック項目 | 内容 | 不備時の対応 |
|---|---|---|
| ①実体要件 | 事業に不可欠な支出か、IVAが別建て記載か、支払は完了しているか、源泉徴収IVAは納付済みか | 該当性の確認、支払記録との突合 |
| ②必須記載項目 | RFC、郵便番号、税制区分、品目等がCFF第29-A条・Anexo 20通りか | 記載不備の特定 |
| ③支払方法・決済コード | forma de pago、método de pago(PUE/PPD)が実態と一致するか | 不一致があれば訂正依頼 |
| ④取引実態の裏付け | 契約書・納品書等で実在する取引であることを裏付けられるか | 裏付け資料の整備 |
| ⑤差戻し判断 | 上記に不備がある場合、計上前に取引先へ差戻し | 再発行・訂正の依頼 |
IVA仕入税額控除の実体要件(LIVA第5条)
事業に不可欠な支出であること
IVA仕入税額控除が認められるためには、まずその支出が、IVAの課税対象となる自社の事業活動にとって「厳密に不可欠(estrictamente indispensable)」な支出である必要があります。したがって、事業と関連性の薄い支出については、そもそも控除の対象外となります。
IVAが別建てで明記されていること
CFDI上、IVAの金額が総額に含まれたまま記載されるのではなく、別建て(desglosado)で明確に記載されている必要があります。
支払が完了していること
IVAの仕入税額控除は、原則としてその取引に係る対価が実際に支払われた期間で行うことが求められます(発生主義ではなく、支払ベースでの控除)。
源泉徴収したIVAを納付していること
運送業者(フレテ)への支払や、個人(persona física)への専門家報酬支払等、IVA源泉徴収義務が生じる取引があります。これらの取引では、源泉徴収したIVAを法定期限内に納付していることも控除要件となります(LIVA第5条フラクションIV)。なお、日系企業の実務でも、運送費や個人への報酬支払で実際に発生し得る論点であるため、対象取引を把握しておくことが望ましいといえます。
CFDIに記載すべき必須項目(CFF第29-A条・Anexo 20)
基本的な記載項目
CFDIには、発行者・受領者双方のRFC、発行日、品目・数量・単位、単価・総額等の基本情報に加え、IVAが別建てで記載されていることが必要です。
CFDI4.0で追加された受領者情報
CFDIバージョン4.0からは、受領者の税務上の住所地の郵便番号(código postal、CFF第29-A条フラクションIVに明記された法律上の要件)の記載が求められています。これに加えて、受領者の税制区分(Régimen Fiscal、CFF条文自体ではなくSAT附属書20〈Anexo 20〉の技術仕様上の必須項目)の記載も必要です。いずれも実務上は必須の記載事項ですが、法的根拠が異なる点には留意が必要です。なお、これらの情報に不一致がある場合、多くはPACによる発行(timbrado)の段階でエラーとなり、そもそもCFDIとして発行できない仕組みになっています。そのため、受領後にこの種の不一致が発覚するケースは限定的です。
支払方法・決済方法コード
CFDIには、支払方法(forma de pago:現金、振込等)に加えて、決済方法コード(método de pago)の記載が必要です。決済方法コードには、代金を一括で受領した時点で発行する「PUE(Pago en una sola exhibición)」と、後日の決済を前提として発行する「PPD(Pago en parcialidades o diferido)」の2種類があります。また、この区分は、控除を計上するタイミングにも関わるため、実態と一致しているかを確認する必要があります。
差戻し基準と実務対応
受領時にチェックすべきポイント
CFDIを受領した際は、上記の実体要件・必須記載項目・支払方法の整合性を確認します。いずれかに不備がある場合は、仕訳計上前に取引先へ差し戻し、訂正・再発行を依頼することが望ましいといえます。
計上後に不備が発覚した場合のリスク
CFDIの不備に気づかないまま仕訳計上・申告まで進んでしまうと、後から訂正するために取消・代替発行の手続きが必要になります。手間が増えるだけでなく、税務調査の際に指摘を受けるリスクも高まります。
よくある誤解と正しい理解
- 誤解:CFDIがSAT上で有効(Vigente)と確認できれば、IVA控除は自動的に認められる。
正解:Vigenteであることは前提条件の一つに過ぎず、LIVA第5条の実体要件(事業に不可欠、IVA別建て記載、支払完了、源泉徴収IVAの納付等)を満たさなければ控除は認められない。 - 誤解:受領者の郵便番号・税制区分は些細な情報なので、多少の誤りがあっても問題ない。
正解:これらは実務上必須の記載事項であり、不一致がある場合は通常、発行段階でエラーとなり発行自体ができないが、旧バージョンの混在等で受領後に不備に気づくケースもゼロではない。 - 誤解:CFDIに不備があっても、後で訂正すればよいので、受領時点でチェックする必要はない。
正解:計上後に不備が発覚すると訂正の手間が大きくなるため、受領時点で差戻し基準に沿ってチェックし、必要な訂正を早期に取引先に依頼することが望ましい。
実務FAQ
Q. 受領者の郵便番号が誤っているCFDIを受け取った場合、どう対応すればよいか。
A. 取引先に連絡し、正しい郵便番号で再発行(取消・代替発行)を依頼することが基本です。また、誤りを放置したまま計上すると、税務上のリスクとなります。
Q. IVAが別建てで記載されていないCFDI(総額のみの記載)を受け取った場合はどうすればよいか。
A. そのままでは仕入税額控除の要件を満たさない可能性が高いため、取引先にIVAを別建てで明記した形での再発行を依頼することが望ましいといえます。
Q. 支払方法(forma de pago)が実際の支払実態と異なっている場合はどうすればよいか。
A. 記載内容を確認し、必要に応じて取引先に訂正・再発行を依頼します。特にPUE(一括即時払い)とPPD(後日決済)の区分は、控除のタイミングにも関わるため確認が重要です。
Q. 運送業者や個人への報酬支払でIVAの源泉徴収を行った場合、何を確認すればよいか。
A. 源泉徴収した金額を法定期限内に納付していることが控除の要件となるため、源泉徴収・納付の記録が整合しているかを確認しておく必要があります。
実務チェックリスト
- 発行者・受領者のRFCが自社の登録情報と一致しているか
- 受領者の郵便番号・税制区分(Régimen Fiscal)が正しく記載されているか
- IVAが別建て(desglosado)で明記されているか
- 支払方法(forma de pago)・決済方法コード(método de pago:PUE/PPD)が実態と一致しているか
- Uso de CFDIが自社の税務上の使途と整合しているか
- 品目・数量・単価等の記載が具体的で、事業との関連性が明確か
- 源泉徴収義務がある取引について、源泉徴収したIVAを期限内に納付しているか
- 取引の実在性を裏付ける資料(契約書・納品書等)を備えているか
- 上記に不備がある場合、計上前に取引先へ差戻し・再発行を依頼したか
まとめ
CFDIが有効(Vigente)であることと、IVA仕入税額控除の要件を満たすことは別の話です。そのためには、LIVA第5条が定める実体要件と、CFF第29-A条・Anexo 20が定める必須記載項目の両方を確認することが重要です。不備があれば計上前に取引先へ差し戻すという運用を徹底することが、税務リスクを避けた実務に定着するCFDI管理につながります。あわせて、CFDIが実在する取引を証憑するものであるという2026年改正の趣旨を踏まえ、形式要件だけでなく取引実態の裏付け資料も日頃から整備しておくことが望ましいといえます。
本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
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リソース
- 付加価値税法(LIVA)第5条
- 連邦税法(CFF)第29-A条
