追徴課税の仕組みとリスク回避の基本

はじめに

メキシコの法人税(ISR)では、申告や計算に誤りがあると税務当局SATによる追徴課税(Crédito fiscal determinado)が発生します。追徴課税は、日本でいう「更正処分+延滞税」に近い仕組みで、本税に加え、更新(インフレ調整)や遅延利息、罰則が上乗せされます。少額でも放置すると大きな資金負担につながるため、基本的な仕組みを理解し、予期せぬリスクを避けることが重要です。本記事では、基礎編として追徴課税の仕組みとリスク回避の要点を整理します。

サマリー

  • 追徴課税の構造:本税+更新(Actualización:インフレ調整)+加算税(Recargos:遅延利息、日本の延滞税に近い)+罰則(Multas)。
  • 典型的な原因:申告漏れ・誤算・証憑不備・CFDI不適格。
  • 法的根拠:CFF第21条(更新と利息)、CFF第70条以降(罰則)。
  • リスク回避:CFDI管理、月次・年次の整合確認、期限内申告・納付の徹底。

追徴課税の仕組み

追徴課税(Crédito fiscal determinado)は、SATによる調査や自己修正の結果、追加で支払う必要がある税額を指します。基本構造は以下の通りです。

  • 本税(Impuesto omitido):不足していた法人税。
  • インフレ調整(Actualización):インフレ率に基づく元本調整(CFF第21条)。
  • 延滞利息(Recargos):遅延日数に応じた利息、日本の延滞税に近い(CFF第21条)。
  • 罰則(Multas):申告義務違反・虚偽申告に対する制裁(CFF第70条以降)。

追徴が発生する典型的な原因

  • 法人税(ISR)の申告漏れや算定誤り。
  • 仕入税額控除(IVA)のCFDI不備や支払要件未達成。
  • 社内経理とDIOTや電子会計(Contabilidad Electrónica)の不一致。
  • 移転価格や関連者取引の調整不足。

よくある誤解と正しい理解

  • 誤解: 「追徴課税は本税だけ払えばよい」
    正しい理解: インフレ調整(Actualización)と延滞利息(Recargos)も必ず加算される。
  • 誤解: 「SATが調査しない限り問題ない」
    正しい理解: 自己申告の誤りでも後から修正・追徴が発生する。
  • 誤解:「CFDIさえあれば全て控除できる」
    正しい理解: 有効性・関連性・支払済みが条件。

チェックリスト

  • □ 月次仮払ISR申告(翌月17日)を期限内に提出・納税しているか。
  • □ 月次IVA申告(翌月17日)を期限内に提出・納税しているか。
  • □ 年次ISR確定申告(翌年3月末)を期限内に提出・納税しているか。
  • □ CFDIと帳簿・申告の整合を突合しているか。
  • □ 支払要件(非現金・補助CFDI)を確認済みか。
  • □ 遅延時の加算税(Recargos)計算ルールを理解しているか。
  • □ 税務通知(Buzón Tributario)を毎日確認しているか。

まとめ

追徴課税は、本税に加えて更新(インフレ調整)・加算税(遅延利息)・罰則が組み合わさるため、少額でも放置すると大きな負担につながります。根拠条文(CFF第21条、第70条以降)を踏まえ、CFDIの適正管理、月次・年次の期限遵守、そして定期的な突合チェックを行うことが、予期せぬ追徴リスクを防ぐための基本です。

本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース:

  • CFF(Código Fiscal de la Federación):第21条(更新・加算税)、第70条以降(罰則)
  • LISR(Ley del ISR):法人税の計算・申告関連規定
  • SAT公式サイト(Buzón Tributario、追徴関連情報)