税務上の減価償却率|会計との相違を理解する

はじめに

本記事は、メキシコにおける税務上の減価償却(LISR第34条・第35条)と会計上の減価償却(IFRS/NIIFベース)の違いを、初学者でも迷わないように要点整理します。税務監査や申告で問われやすい証憑(CFDI)・関連性・支払要件にも触れ、実務で使える最低限の判断基準を提示します。

サマリー

  • 税務は上限率方式:LISRの定める資産区分ごとの上限率を超えて償却しない(LISR第34・35条)。
  • 会計と税務は別管理:会計は経済的耐用年数、税務は法定率。差異は一時差異台帳で管理。
  • 控除の3要件:有効CFDI(CFF第29・29-A条)+課税関連性支払要件(LISR第27条)。輸入資産はPedimentoの整合を確保。
  • 代表的税務償却率(例):建物5%、機械10%、コンピュータ30%、自動車25%(例示)。

詳細解説

1) 税務上の減価償却の基本

  • 法定上限率:LISR第34条(有形固定資産)・第35条(特定資産等)。上限率内で各期償却。
  • 取得原価の裏付け:資産のCFDI、契約、支払証憑。輸入はPedimento番号を資産台帳に紐付け。

2) 会計との相違点

観点会計(IFRS/NIIF)税務(LISR)
根拠経済的耐用年数法定上限率(第34・35条)
変更見積り変更可原則、法定率に従う
目的実態反映課税所得計算の統一
差異処理会計上費用税務加減算/繰延税金の検討

3) 代表的な税務償却率

  • 建物:5%/年
  • 機械装置:10%/年
  • 自動車(一般):25%/年
  • コンピュータ・IT機器:30%/年

※実際の適用は最新のLISR本文・附則や該当政令を確認してください。

4) 数値例

取得価額1,000,000ペソのIT機器(税務率30%、会計耐用5年=20%)の場合:

  • 会計償却費:200,000
  • 税務償却費:300,000
  • 差異:100,000(税務>会計)。税務申告では300,000を損金算入、会計との差は一時差異台帳で管理。

5) 損金算入の必要条件

  • CFDIの適正性:CFF第29・29-A条の必須記載事項を満たす。
  • 事業関連性:LISR第27条の「所得獲得との関連」を満たす。
  • 支払手段:一定額超や燃料等は非現金決済要件(LISR第27条III)を確認。
  • 輸入資産:Pedimento(通関)情報と台帳・CFDIの整合。

誤解と正しい理解

  • 誤解:会計耐用年数=税務償却率。
    正しい理解:税務は法定上限率が基準。会計と税務は別管理。
  • 誤解:CFDIが無くても台帳があれば損金算入できる。
    正しい理解:有効CFDI+関連性+支払要件が前提。CFDI不備は否認リスク。
  • 誤解:輸入資産は請求書だけで良い。
    正しい理解:Pedimentoとの突合が不可欠(番号・金額・品目)。

チェックリスト

  • 資産ごとに税務区分と上限率を割当済みか。
  • 会計と税務の差異を台帳(ブリッジ表)で管理しているか。
  • CFDI・契約・支払証憑・(該当時)Pedimentoがファイル連結されているか。
  • 非現金決済要件(LISR第27条III)に抵触しないか。
  • 年度改正(率・附則)を期首にアップデートしたか。

まとめ

税務償却は法定上限率、会計償却は経済的耐用年数。両者の差異は台帳で可視化し、CFDI/関連性/支払要件を満たして損金算入を確保します。輸入資産はPedimento整合を忘れずに。最新の法令・政令更新を定期点検してください。

本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース:

  • LISR(所得税法)第27条・第34条・第35条
  • CFF(連邦税法)第29条・第29-A条(CFDI要件)
  • Ley Aduanera(関税法)・Pedimento実務(輸入資産の裏付け)
  • SAT公式:CFDI・電子会計ガイド(最新版を参照)