有給休暇制度の基礎|付与日数と労働者の権利

はじめに

2023年の労働法改正(通称:尊厳ある休暇)により、メキシコの有給休暇日数は大幅に増加しました。特に「初年度から12日」という水準は、企業の人件費やシフト管理に直接的な影響を与えています。本記事では、勤続年数ごとの付与日数、休暇手当(Prima Vacacional)、そして意外と見落としがちな「6ヶ月以内の付与義務」について解説します。

サマリー

  • 付与日数:勤続1年で最低12日の権利が発生し、以降年数に応じて増加する(2023年改正)。
  • 休暇手当:休暇取得時に、給与とは別に「給与額の25%以上」の休暇手当(Prima Vacacional)を支給する義務がある。
  • 付与期限:会社は権利発生日から6ヶ月以内に従業員に休暇を与えなければならない(LFT第81条)。
  • 連続取得:従業員は、少なくとも12日間を連続して取得する権利を持つ(会社側から分割を強制できない)。

詳細

1) 勤続年数と付与日数(LFT第76条)

2023年1月1日より、以下の日数が適用されています。勤続1周年を迎えた時点で、下記の権利が発生します。

勤続年数付与日数
1年12日
2年14日
3年16日
4年18日
5年20日
6〜10年22日
11〜15年24日
16〜20年26日
21〜25年28日
26〜30年30日

2) 休暇手当(Prima Vacacional)

休暇を取得した日に対し、通常の給与に加えて少なくとも25%の割増手当を支払う必要があります(LFT第80条)。

(例:日給1,000ペソの人が10日間休暇を取る場合、通常の給与10,000ペソに加え、2,500ペソの手当を支給)

3) 取得ルールと期限(LFT第81条・78条)

付与の期限:

会社は、権利発生から6ヶ月以内に休暇を付与する義務があります。

連続取得の権利:

法改正により、労働者は「最低12日間を連続して取得する権利」を持ちます。ただし、労働者自身が希望する場合は分割取得も可能です。会社都合で一方的に「毎月1日ずつ消化」と命じることはできません。

誤解と理解

  • 誤り:「入社した初日から有給休暇が使える」
    → 法的には「勤続1年経過後」に権利が発生します。ただし、福利厚生として前借り(Adelanto)を認める企業も存在します。
  • 誤り:「未消化の有給は翌年に自動消滅する」
    → 自動消滅はしません。法的には権利発生から1年半(6ヶ月の付与期間+1年の時効期間)までは請求権が残ります。トラブル防止のため、期限内の消化を促すのが企業責任です。
  • 誤り:「忙しいから有給を買い取ってもよい」
    有給休暇の金銭による買い取りは原則禁止です(退職時を除く)。必ず「休むこと」で消化させなければなりません。

チェックリスト

  • 人事システムの設定は、2023年改正後の日数テーブル(1年目12日〜)になっているか。
  • 従業員の入社日(権利発生日)を管理し、そこから6ヶ月以内に取得計画を立てさせているか。
  • 休暇手当(25%以上)の計算と支払いが、休暇取得と連動して行われているか。
  • 退職時の清算(Finiquito)において、未消化分の休暇および休暇手当を精算しているか。

まとめ

有給休暇の日数増はコスト増要因ですが、適切に運用すれば従業員の定着率向上につながります。「6ヶ月以内の付与」は会社の法的義務であることを認識し、計画的な消化を促す体制づくりが重要です。

本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース:

  • メキシコ連邦労働法(LFT)第76条・第78条・第81条