年次賞与(Aguinaldo)の制度と計算方法
はじめに
メキシコのAguinaldo(アギナルド)は、日本のボーナス(賞与)とは異なり、企業の業績に関わらず支払いが義務付けられている「確定債務」です。毎年12月のキャッシュフローに大きな影響を与えるため、正確な予算管理が必要です。本記事では、計算の基礎、課税ルール、そして現在議論されている「支給日数倍増」の動向について解説します。
サマリー
- 支給義務:全従業員に対し、少なくとも給与の15日分を支払う義務がある(LFT第87条)。
- 期限:毎年12月20日までに支給しなければならない。
- 途中入退社:年間の在籍日数に応じた比例配分(Proporcional)で計算して支払う。
- 非課税枠:2025年のUMA(113.14ペソ)に基づき、3,394.20ペソまでは所得税がかからない。
詳細
1) 基本計算(日給 × 15日)
Aguinaldoの計算基礎は、通常の日給(Salario Diario)です。統合日給(SDI)ではありません。
(例:月給30,000ペソの場合)
- 日給換算:30,000 ÷ 30 = 1,000ペソ
- Aguinaldo額:1,000 × 15日 = 15,000ペソ
2) 途中入社・退職の場合(比例計算)
1月1日から12月31日まで在籍していない場合は、日数で按分します。
(例:7月1日に入社し、12月まで在籍した場合=在籍184日)
- Aguinaldo年間支給額(フル):15,000ペソ
- 比例支給額:15,000 ÷ 365 × 184 = 7,561.64ペソ
3) 税金(ISR)の取り扱いと2025年UMA
Aguinaldoには所得税(ISR)がかかりますが、「UMAの30日分」までは非課税です。
非課税枠(2025年実績):113.14 UMA × 30日 = 3,394.20ペソ
※これを超える金額に対してのみISRが課税されます。全額非課税ではない点に注意してください。
誤解と理解
- 誤り:「業績が悪い年はAguinaldoをカットできる」
→ できません。 法的義務(Prestación de Ley)であり、未払いは労働当局による罰金の対象となります。 - 誤り:「試用期間中の社員には払わなくてよい」
→ 試用期間であっても雇用関係はあるため、在籍日数に応じた支払い義務があります。 - 誤り:「Aguinaldoはもう30日になった」
→ 議会での審議が続いていますが、現時点で法定日数は15日のままです。ただし、法改正によるコスト倍増リスクは依然として高く、注視が必要です。
チェックリスト
- 12月20日までに全従業員への支払いを完了する資金計画を立てているか。
- 途中退職者の清算(Finiquito)に、Aguinaldoの未払い分(比例配分)を含めているか。
- 給与計算システムで、2025年のUMA(113.14ペソ)に基づく非課税枠が正しく設定されているか。
- 将来の法改正(30日への引き上げ)を見越した人件費シミュレーションを行っているか。
まとめ
Aguinaldoはメキシコの労働者にとって最も重要な収入源の一つです。最新のUMA値(2025年 : 113.14ペソ)を用いた正確な税金計算を行い、計算ミスや遅配を防ぎましょう。基本ルールを遵守しつつ、将来的なコスト増(法改正リスク)にもアンテナを張っておくことが重要です。
本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
関連記事:
リソース:
- メキシコ連邦労働法(LFT)第87条
- 所得税法(LISR)第93条(非課税枠)
- INEGI:2025年UMA告示
