内部取引の会計処理|グループ内取引の整理方法

はじめに

グループ内での売上や資金のやり取りは、外部の投資家や利害関係者から見ると「一つの会社の中でのやり取り」に過ぎません。そのため、連結財務諸表ではこれらの内部取引を相殺し、グループ外部との取引だけを表示する必要があります(NIF B-8、IFRS 10)。

本記事では、メキシコ子会社がまず理解しておくべき「内部取引消去の基本ルール」と「実務上の注意点」を整理します。

内部取引消去の基本ルール(NIF B-8)

  • 目的: 親会社と子会社間、または子会社同士の取引を消去し、外部との取引のみを残す。
  • 対象範囲: 売上・仕入、配当、債権・債務、貸付金、在庫や固定資産に含まれる未実現利益、内部役務、ロイヤルティなど。
  • 基本原則: グループ外部に対して発生した収益・費用・資産・負債だけを連結に反映する。

主な消去項目とポイント

  • 売上・仕入: 親子間・子会社間の売上と対応する仕入を相殺。計上時期のズレに注意。
  • 債権・債務: 売掛金/買掛金、貸付金/借入金などを同額で消去。為替差の有無を確認。
  • 配当: 親会社が受け取る配当は消去。ただし非支配株主持分はその持分に配分。
  • 未実現利益: グループ内の販売で在庫や固定資産に利益が含まれる場合は消去し、外部販売や減価償却の進行に応じて利益を認識。

未実現利益の扱い

  • 棚卸資産: 期末時点で内部利益を含む在庫は消去。翌期に外部販売されたときに利益が戻る。
  • 固定資産: グループ内で売買した場合、内部利益を除いた金額で簿価と減価償却を計算する。

為替換算差異(CTA)の基礎

  • 換算方法: 損益計算書は平均レート、貸借対照表は期末レートで換算するのが一般的(NIF B-15)。
  • 差額の扱い: 換算差額は「その他の包括利益(OCI)」に計上。内部取引の消去に伴う差額はCTAに組み込むか、個別に精査する。

日本本社への報告との接点

  • 突合の仕組み: 会社間の取引を「相手先・取引種類・金額・通貨・CFDI番号」で一覧化し、突合マトリクスを作成。
  • 会計基準差の整理: IFRSや日本基準(J-GAAP)との表示・測定の差は注記で橋渡し。非支配株主持分の扱いにも注意。

実務チェックリスト

  • □ 売上⇔仕入を相手先・通貨・CFDI番号で突合できているか
  • □ 債権・債務の期末残高が一致しているか(為替換算前後を含む)
  • □ 棚卸資産や固定資産に内部利益が残っていないか
  • □ 内部配当・利息・ロイヤルティの課税関係(源泉税・移転価格)を確認しているか

まとめ

内部取引の消去は「グループ外部だけが見える状態」を作るための基本動作です。特に売上・仕入、債権・債務、配当、未実現利益の4つを確実に消去し、通貨やレート、CFDI情報まで含めた突合を標準化することが重要です。さらに為替換算差異(CTA)や基準差を意識すれば、連結精度と監査対応力が大きく向上します。

本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース:

  • NIF B-8「Estados financieros consolidados」
  • IFRS 10「Consolidated Financial Statements」