メキシコ税制の全体像|日本と比較した税務環境の基本理解

はじめに

本稿は、メキシコの主要税目である法人税(ISR)付加価値税(IVA)給与関連(ISR源泉・州給与税ISN・社会保険)を、日本制度と比較しながら俯瞰します。メキシコでは電子請求書CFDIを起点に、帳簿と申告を一貫管理する運用が特徴です(根拠例:LISRLIVACFF)

サマリー

  • 三本柱:法人税(ISR)税率30%・付加価値税(IVA)16%・給与関連(ISR源泉・ISN・IMSS/INFONAVIT)
  • 申告サイクル:原則月次+年次
  • メキシコと日本との比較:
    日本→法人税+地方法人税・消費税の組合せ
    メキシコ→CFDI起点の一気通貫運用が中核

メキシコの主要税目

1) 法人税 ISR(Impuesto sobre la Renta)

  • 税率:30%(LISR第9条)。
  • 課税ベース:益金−損金を基礎に各種調整(移転価格・減価償却・寄付金等)
  • 国外支払の源泉:配当・利子・ロイヤリティ等は国内源泉所得・条約適用を検討
  • 申告:月次予定納付+年次確定申告(電子申告、SATポータル)

2) 付加価値税 IVA(Impuesto al Valor Agregado)

  • 基本税率:16%(LIVA第1条・第2条)。0%対象・非課税の整理により仕入税額控除が変動。
  • 控除要件(重要):
    • 適正なCFDIの受領(CFF第29条・第29-A条)
    • 用途要件(課税売上対応)と区分管理(課税/0%/非課税)
    • 支払実行LIVA第5条:efectivamente pagado=実際に支払済みが控除の前提)
    • 免税売上がある場合は按分(prorrata)を適用
  • 申告:月次。過払(Favor)は相殺・還付の選択可
  • DIOT:第三者取引明細の提出

3) 給与関連(所得税源泉・ISN(給与税)・社会保険)

  • 所得税源泉:給与支給時に源泉徴収・翌月申告(LISR該当条)
  • ISN(給与税):月次納付・州ごとに税率が異なる
  • 社会保険:IMSS/INFONAVITへの拠出(税金ではないが、資金繰り・会計影響が大きい)
  • 給与CFDI:給与版CFDI(CFDI-Nómina)で課税・非課税区分を反映(CFF第29条・第29-A条)

メキシコの申告サイクル

  • 月次:ISR予納、IVA申告、DIOT提出
  • 年次:ISR確定申告(暦年ベース)
  • 電子証憑:CFDIの発行・取消・代替はCFF第29条・第29-A条、仕様はRMF Anexo 20

メキシコと日本の比較

観点 メキシコ 日本
法人課税 ISR 30% 法人税+地方法人税 約30%-35%
間接税 IVA 16% (控除は支払実行が前提) 消費税(インボイス制度)10%
証憑 CFDI必須 適格請求書等保存方式・電帳法
運用文化 証憑+月次厳格運用 月次/年次併用(運用は企業差)

運用のポイント:CFDI×ERP×申告の三位一体

  1. 証憑:売上・仕入・経費・給与のCFDIを適正発行/受領(CFF29・29-A)。
  2. 帳簿:ERPに連携し税区分(16%/4%/0%/非課税)・用途タグを整備。
  3. 申告:ISR予納・IVA月次・DIOT・ISR年次を一元管理。
  4. 差異管理:CFDI集計−ERP−申告値の三点突合ログを保存。

まとめ

日本でもインボイス制度が確立されておりますが、メキシコ税務はCFDI(電子請求書)を起点に、ERPおよび申告書と一貫させる設計がポイントとなります。このCFDI(電子請求書)がかなり重要になります。ISR、IVA、給与関連を月次で整合させ、日本との制度差を踏まえたプロセスを確立するのが良いかと思います。

本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。

関連記事

リソース

  • Ley del ISR(例:第9条 税率)
  • Ley del IVA(例:第1条・第2条 税率、第5条 控除の前提(支払)
  • Código Fiscal de la Federación(例:第29条・第29-A条 CFDI)