メキシコ企業の決算年度と決算フロー|本社報告との違い
1. はじめに
メキシコで企業活動を行う際、日本本社の経理担当者が特に混乱しやすいのが「決算年度」と「決算フロー」です。日本では各企業が自由に決算期を設定できますが、メキシコでは すべての企業が暦年(1月1日〜12月31日)を会計年度とすることがISR法で義務付けられています。この違いは、本社への報告スケジュールやグループ連結決算に大きな影響を与えます。
2. なぜ暦年が義務付けられているのか
- 徴税の効率化:税務当局(SAT)が全国すべての法人を統一の暦年で管理することで、税務調査や統計を効率化。
- インフォーマル経済への対応:非正規経済が大きいメキシコでは、課税の公平性を確保するために統一基準が必要とされた。
3. メキシコにおける決算フロー
- 帳簿整理(毎月):電子会計(Contabilidad Electrónica)を記録・保存し、SATへXML形式で月次データを提出。
- 年次決算(1〜12月):財務諸表を作成し、必要に応じて外部会計士レビューや監査。
- 法人税申告(翌年3月末):ISR法に基づき、翌年3月末までに確定申告。e.firma(電子署名)を用いてオンライン提出。
4. 日本本社報告とのギャップと調整例
- 決算期のズレ:日本が3月決算の場合、暦年との差異を埋めるために「暫定試算表(1〜3月分)」を切り出して本社報告。
- 為替換算:メキシコペソ建てを日本円に換算する際、期中平均レートと期末レートを使い分ける必要あり。
- 移転価格調整:グループ間取引では、暦年ベースと本社決算ベースで差異が出るため追加仕訳が必要になるケースもある。
5. 実務での工夫
- ダブル帳簿的管理:SAT提出用(暦年ベース)と日本本社用(3月決算ベース)を並行管理。
- 決算カレンダーの共有:SAT提出(翌年3月末)と本社報告(通常はより早期)を可視化し、現地会計士と本社担当が同じスケジュール感で動けるようにする。
まとめ
メキシコでは法律で暦年決算が義務付けられており、日本本社との決算期ズレが実務上の大きな課題です。その背景には税務の統一管理という合理的理由があり、企業は暦年に従わざるを得ません。このギャップを埋めるには、暫定試算表や為替換算など具体的な調整を行い、SAT提出用と本社用を分けて管理することが重要です。
本記事は、Miranexus Visionary Partner S.A. de C.V.(MVP)が「日本企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
