キャッシュフロー計算書の作成要件と基本構造
はじめに
キャッシュフロー計算書(Estado de Flujos de Efectivo)は、企業の資金の流れを把握するために不可欠な財務諸表です。メキシコ会計基準(NIF B-2「Estado de Flujos de Efectivo」)では、上場・非上場を問わず作成が求められ、日本本社への報告でも重要な役割を果たします。本記事では、その作成要件と基本的な構造を解説します。
NIF B-2に基づくキャッシュフロー計算書の作成要件
- 作成義務:全ての企業にキャッシュフロー計算書の作成義務あり
- 目的:会計利益では見えない「資金の増減」を示し、企業の支払能力や資金繰りを明らかにする
- 現金および現金同等物(Efectivo y equivalentes):NIF B-2では「90日以内に満期を迎える短期投資」を含む
- 方法:
・直接法(Método directo):収入・支出を現金ベースで直接表示
・間接法(Método indirecto):当期純利益から調整して現金増減を導く
メキシコでは間接法の利用が一般的ですが、直接法の方が資金実態を分かりやすく示せます。
キャッシュフロー計算書の基本構造
キャッシュフローは通常、以下の3区分で構成されます。
- 営業活動によるキャッシュフロー(Flujos de operación):売上収入、仕入支払、人件費など
- 投資活動によるキャッシュフロー(Flujos de inversión):固定資産購入や売却、有価証券の取得など
- 財務活動によるキャッシュフロー(Flujos de financiamiento):借入や返済、増資、配当支払など
日本基準(J-GAAP)、IFRS(IAS 7)と同様に、この3区分は国際的に共通です。
IFRS・日本基準との比較(基礎補足)
- IFRS:利息・配当は営業・投資・財務のいずれかに分類可能(柔軟性あり)
- 日本基準・NIF:利息支払は営業CF、配当金支払は財務CFに含めるのが原則
本社連結で差異が出るため、調整が必要となる場合があります。
実務での留意点
- 資金繰り管理:キャッシュフローは利益以上に資金繰りに直結するため、経営判断に重要
- 本社報告:日本本社連結用のパッケージでは、キャッシュフロー計算書が必須項目となる場合が多い
- 監査対応:監査人(Auditor externo)も資金の妥当性を確認するため、CF計算書は監査で重要なチェック対象
まとめ
キャッシュフロー計算書は、資金の流れを明確にし、経営判断・資金繰り管理・本社報告に不可欠な財務諸表です。NIF B-2に基づき3区分(営業・投資・財務)で作成し、現金同等物の定義や間接法・直接法の違いを理解することが、メキシコ子会社の経理実務で重要となります。
本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります
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【リソース】
- NIF B-2「Estado de Flujos de Efectivo」
- IFRS IAS 7「Statement of Cash Flows」
