資金繰り表の作成基礎|キャッシュ管理の初歩

はじめに

資金繰り表(Flujo de efectivo, Presupuesto de flujo de efectivo)は、企業の現金収支を予測・管理するための基本的なツールです。メキシコでは、NIF B-2「Estado de Flujos de Efectivo」に準拠して現金の流れを把握し、さらにSATの電子会計(Contabilidad electrónica)提出義務とも関連します。本記事では、資金繰り表の構成・作成手順・メキシコ特有の留意点について解説します。

NIF B-2に基づく資金繰り管理

  • 営業活動:売上入金、仕入支払、人件費、IVA納付・還付など日常のキャッシュフロー。
  • 投資活動:設備投資や有価証券の取得・売却など。
  • 財務活動:借入、返済、資本取引(増資・配当)など。

資金繰り表は、キャッシュフロー計算書(Estado de flujos de efectivo)と目的が異なります。
キャッシュフロー計算書は「決算報告用」、資金繰り表は「将来の資金見通し」に焦点を当てる点を押さえておく必要があります。

資金繰り表の作成手順

  1. 期首残高を確認(Saldo inicial de efectivo)。
  2. 入金予定を記録(Cobros esperados、CFDI売上請求ベース)。
  3. 出金予定を記録(Pagos previstos、仕入・人件費・税金など)。
  4. 残高計算を行い、資金不足リスクを特定。
  5. 資金不足が見込まれる場合は、支払延長交渉・短期借入・送金計画で対応策を検討。

メキシコ特有の資金繰り留意点

  • IVA還付:輸出企業などはIVA還付(Devolución de IVA)を申請できますが、実際には数か月遅延するケースが多く、資金繰り表に反映させる必要があります。
  • 外貨建取引:ドル・ユーロ建取引では為替レート変動の影響が大きく、先物予約(Forward contract)やヘッジの活用も検討すべきです。
  • CFDI整合性:入出金は必ずCFDI証憑(Comprobante Fiscal Digital por Internet)と一致させ、SAT提出用の電子会計データと突合できる状態に保つことが重要です。

日本本社への報告との接点

日本本社ではキャッシュフロー計算書や連結資金繰り表(キャッシュプーリング計画)との整合が求められます。メキシコ子会社は、週次・月次の資金繰り表を整備し、為替換算差異やIVA還付のタイムラグを注記することで、連結報告の透明性を確保できます。

まとめ

資金繰り表は、日常的なキャッシュ管理に加え、メキシコ特有のIVA還付遅延や外貨リスク、CFDIとの整合性を考慮することで実効性が高まります。NIF B-2に基づき営業・投資・財務活動を整理し、本社連結報告に耐えうる基礎を固めましょう。

本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース

  • NIF B-2「Estado de Flujos de Efectivo」
  • SAT「Contabilidad electrónica」ガイドライン