繰越欠損金制度の仕組みと控除期間

はじめに

メキシコの税制では、赤字となった年度の欠損金(Pérdidas fiscales)を将来年度の課税所得から控除することが認められています。本記事では、繰越欠損金制度の基本的な枠組みと実務上の注意点を整理します。(根拠:LISR第57条・第61条)。

サマリー

  • 控除期間: 10年間の繰越が可能(LISR第57条)。
  • 利用順序: 古い年度から順に控除(FIFO方式)。
  • 更新(Actualización): 欠損金は毎年インフレ係数で更新。
  • 制限事項: 支配権変動や事業継続性が失われると控除不可(LISR第61条)。

詳細

控除期間: 欠損金は発生した翌年度から10年間繰越が可能です。11年目以降は控除できません。

更新(Actualización): 欠損金はインフレ係数で更新されます。例:1年目欠損100、インフレ5%の場合、翌年は105として控除可能。

利用順序: 繰越欠損金は古い年度から順に利用する必要があります。

制限事項: 企業の支配権(株式の過半数)に変動がある場合や、事業継続性が失われた場合、欠損金の控除が制限されます(LISR第61条)。

誤解と理解

  • 誤解: 繰越欠損金は無期限に使える。
  • 正しい理解: 控除できるのは10年間のみであり、11年目以降は消滅する(LISR第57条)。
  • 誤解: どの年度からでも自由に控除できる。
  • 正しい理解: 古い年度から順に控除する必要がある。

チェックリスト

  • 発生年度ごとに欠損金台帳を管理しているか。
  • インフレ更新を毎年反映しているか。
  • 古い年度から順に控除しているか。
  • 支配権変動や事業継続性喪失のリスクを確認しているか。

まとめ

繰越欠損金制度は資金繰りや税務計画に有用ですが、控除期間や制限を誤解するとリスクが高まります。条文根拠を押さえ、正しい管理を行うことが重要です。

本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース:

  • LISR第57条・第61条(繰越欠損金の控除期間・制限)
  • SAT公式ポータル:SAT
  • OECD 移転価格・税務ガイドライン