為替換算の基礎|ペソ建てと連結報告の注意点
1. はじめに
メキシコ子会社の帳簿は原則ペソ建て(NIF B-15)。一方、日本本社への連結報告では円換算が必要となり、為替換算差額(OCI)と税務上の為替差損益の違いを理解することが重要です。
2. 会計基準上の換算ルール(NIF B-15)
- 資産・負債:期末レートで換算。
- 収益・費用:取引時レートまたは平均レートで換算。
- 換算差額:その他包括利益(OCI)に計上(純資産の一部)。
OCIは「換算上の差額」であり、実際のキャッシュフローを伴いません。 つまり、為替レートの変動を会計表示に反映した結果で、現金の入出金とは別物です。
3. 税務上の扱い(ISR法)
- 為替変動による差損益は発生時点で損益に認識し、課税所得に反映(ISR法 第8条・第20条)。
- 会計(OCI)と税務(損益)の処理時期が異なるため、申告で調整が必要になることがあります。
4. 連結報告での注意点
- 為替換算差額は連結上、為替換算調整勘定として純資産に計上(IFRS/日本基準と概念整合)。
- 単純にペソのPL/BSを円換算せず、科目ごとに期末/平均レートのルールで再計算。
- 売掛金・買掛金など貨幣性項目の評価替えは、連結前にローカル帳簿で実施しておくと整合性が高い。
5. よくある失敗と対策
失敗例:メキシコ子会社がペソ建て試算表を単純に円換算して本社送付 → 本社側で大規模な連結調整が発生し決算遅延。
対策:Excelで「資産負債=期末、収益費用=平均」の換算表を用意し、自動換算。会計ソフトの換算機能がある場合は活用。
6. 日系企業特有の論点
- 資本金払込(ドル→ペソ):払込時レートにより資本金額が変動し得る(定款・法定レートの確認が前提)。
- 配当送金(ペソ→ドル):為替変動で本社受取額が大きく変動。送金時点レートと換算方法をグループ内で共有しておく。
まとめ
為替換算は、会計(NIF B-15:OCI)、税務(ISR法 第8条・第20条:損益)、連結(純資産の換算調整)の三層で理解するのが基本。OCIはキャッシュを伴わない差額である点を押さえ、単純換算の誤りを避けるために換算ルールをツール化しましょう。
本記事は「日本企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
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リソース欄
- NIF B-15(為替換算)
- メキシコ所得税法(Ley del ISR 第8条・第20条)
