最低賃金制度の仕組みと毎年の改定プロセス

はじめに

メキシコの最低賃金(Salario Mínimo)は、政府・労働者・使用者の三者構成委員会(CONASAMI)によって毎年改定されます。シェインバウム政権下でも「労働者の購買力回復」を掲げた積極的な引き上げが続いており、2026年も大幅な増額が決定しました。本記事では、2026年1月適用の最新数値と、改定の仕組みについて解説します。

サマリー

  • 2026年1月1日より、一般地域の最低賃金は315.04ペソ(前年比13%増)に引き上げられる。
  • 北部国境自由地帯(Zona Libre)は440.87ペソ(前年比5%増)となり、依然として高い水準が維持される。
  • 改定額は、インフレ調整分としての「定額加算(MIR)」と「%引き上げ」の組み合わせで算出される。
  • 最低賃金の上昇は、給与そのものだけでなく社会保険料(IMSS)の会社負担増に直結する。

詳細

1) 2026年の地域別最低賃金(確定値)

2025年12月のCONASAMI発表に基づき、以下の金額が2026年1月1日から適用されます。

  • 北部国境自由地帯(Zona Libre de la Frontera Norte):
    日給 440.87 ペソ(約5%増)
    対象:バハ・カリフォルニア州全域やタマウリパス州の一部など、米国国境沿いの43自治体。
  • 一般地域(Resto del país):
    日給 315.04 ペソ(約13%増)
    対象:上記以外のメキシコ全土(メキシコシティ、バヒオ地域など)。

2) 改定の仕組みとMIR

最低賃金の改定には、MIR(独立回復額:Monto Independiente de Recuperación)という独自の計算手法が用いられます。これは「まずペソ建ての定額を足し(MIR)、その合計額に対してパーセンテージ(インフレ率等)を掛ける」という方式です。

この仕組みにより、インフレを過度に誘発することなく、低所得層の実質賃金のみを底上げすることを狙っています。2026年改定においても、一般地域ではこのMIRが大きく寄与しています。

3) 職種別最低賃金

一般的な労働者とは別に、約60種類の「専門職・技能職(Salarios Mínimos Profesionales)」についても個別に最低賃金が設定されています(例:看護助手、トラック運転手、建設作業員など)。一般最低賃金よりも高く設定されるケースがあるため、該当職種の確認が必要です。

誤解と理解

  • 誤り:「メキシコ全土で同じ最低賃金である」
    → 北部国境地帯は一般地域より約1.4倍高く設定されています(2026年時点)。進出地域の区分確認が必須です。
  • 誤り:「最低賃金の人はいないから、ウチには関係ない」
    → 最低賃金が上がると、IMSS(社会保険)の算定基礎の下限も上がります。結果として会社負担の保険料コストが増加します。
  • 誤り:「改定率は数年に一度の見直しである」
    毎年必ず改定されます。1月の給与計算前にシステム設定(パラメーター)を更新しないと、計算ミスや法違反のリスクが生じます。

チェックリスト

  • 2026年の最新最低賃金額(315.04ペソ / 440.87ペソ)を把握しているか。
  • 自社の拠点が「北部国境自由地帯」と「一般地域」のどちらに含まれるか確認しているか。
  • 給与計算ソフトの設定値(最低賃金テーブル)を1月給与支払い前に更新済みか。
  • 最低賃金引き上げに伴うIMSS負担増を、新年度の予算に反映しているか。

まとめ

最低賃金の改定は、単なる「一番下の給与」の話にとどまらず、社会保険料や給与テーブル全体への波及効果を持ちます。特に2026年は一般地域で13%という大幅な引き上げが行われるため、人件費予算への影響を精査し、適切なコンプライアンス対応を行うことが重要です。

本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース:

  • メキシコ連邦労働法(LFT)第90条・第91条
  • CONASAMI(全国最低賃金委員会)公式サイト
  • DOF(連邦官報):2026年最低賃金告示