帳簿保存義務と監査対応の基礎

1. はじめに

メキシコで事業を行う企業には、税務署(SAT)への申告に加えて、帳簿の保存義務と、規模や状況に応じた監査対応が求められます。本稿は基礎編として、保存の考え方と監査の基本区分をシンプルに整理します。

2. 帳簿保存義務の基本

  • 保存期間:原則5年(実務上は10年保存を推奨)。
  • 対象:仕訳帳、総勘定元帳、補助簿、財務諸表、CFDI(電子請求書)、銀行取引記録 など。
  • 形式:XML等の電子データを原本とみなし、PDF・紙は補助資料。
  • 提出:SATからの要請時に迅速に提出できる体制を整備。

3. 監査の基本区分(法定監査 vs 税務監査)

  • 法定監査(Estados Financieros Auditados):会社法・証券規制に基づく財務諸表監査。一定規模・上場企業などで義務化され、目的は財務諸表の信頼性担保。
  • 税務監査(Dictamen Fiscal):所得税法(ISR)等に基づく税務目的の監査。売上規模等の要件により義務の場合があるほか、任意選択も可能。任意で受検することで、SATの調査リスク低減や是正の早期発見につながるメリットがある。

4. 実務でのポイント(基礎)

  • 電子保存の徹底:CFDIのXMLと会計仕訳を関連付けて保存。
  • バックアップ:クラウドや外部媒体に定期保存(詳細ツールは実務編で解説予定)。
  • 監査人との連携:期中から必要データを共有し、期末集中を回避。

まとめ

帳簿保存と監査はコンプライアンスだけでなく、企業の信頼性とリスク管理の基盤です。基礎としては、保存期間・電子原本の考え方・監査区分(法定/税務)を押さえ、必要に応じて税務監査の任意受検も選択肢に入れるとよいでしょう。

本記事は「日本企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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