勤怠管理制度の基礎|打刻・残業申請の仕組み

はじめに

勤怠管理は、単に出退勤を記録するだけでなく、残業代の計算・有給休暇の管理・社会保険料の算定をつなぐ最も重要な業務です。メキシコでは労働法(LFT)によって労働時間や休憩が厳格に決められており、違反は労務訴訟の火種になります。本記事では、現場の管理者が最低限知っておくべき「時間のルール」と「記録の残し方」について解説します。

サマリー

  • 労働時間の上限:昼間勤務は1日8時間、夜間は7時間、混合は7.5時間が基本(LFT第61条)。
  • 残業(時間外労働):週9時間までは2倍(ダブルペイ)、それを超える分は3倍(トリプルペイ)の支払いが必要。
  • 休日・休憩:勤務中の休憩(最低30分)と、週1回の有給休息日(通常は日曜日)が義務付けられている。
  • 日曜手当:日曜日に勤務した場合、通常の給与に加えて25%の上乗せ手当(Prima Dominical)が必要。
  • 記録の保存:勤怠データや契約書は、労働法および税法の規定により原則5年間保存しなければならない。

詳細

1) 労働時間の基本ルール(LFT第60〜63条)

メキシコでは、働く時間帯によって「1日の上限時間」が異なります。

  • 昼間(Diurna):06:00〜20:00の間 → 1日8時間まで
  • 夜間(Nocturna):20:00〜06:00の間 → 1日7時間まで
  • 混合(Mixta):昼と夜にまたがる場合(※夜間が3.5時間未満) → 1日7.5時間まで
  • 休憩時間:勤務中に、少なくとも30分の休憩を与えてリフレッシュさせなければなりません。

2) 残業代の計算方法(LFT第66〜68条)

所定労働時間を超えて働いた場合、以下のルールで割増賃金を支払います。

  • 最初の週9時間まで:時給の200%(2倍)を支払う。
  • 週9時間を超えた分:時給の300%(3倍)を支払う。

※残業は原則として「非常時や特別な事情」がある場合に限定され、1日3時間・週3回を超えてはならないとされています。

3) 週休と日曜勤務(LFT第69〜71条)

  • 週休制:6日働いたら、少なくとも1日の休み(有給)を与えなければなりません。
  • 日曜手当(Prima Dominical):シフト制などで日曜日に勤務する場合、通常賃金の25%を追加で支払います。これは代休を与えたとしても支払う必要があります。

4) 勤怠管理の実務フロー

適正な給与計算と監査対策のために、以下の流れを確立しましょう。

  1. 打刻(記録):タイムカード、指紋認証、アプリなどで「出勤・退勤・休憩」の時刻を正確に記録します。
  2. 申請と承認:残業や休日出勤は、原則として「事前申請・上長承認」制にします。勝手な残業を防ぐためです。
  3. 給与反映:承認されたデータを基に、割増賃金(2倍・3倍)や日曜手当を計算し、給与明細(CFDI)に記載します。
  4. 保存:勤怠データは、後で「残業代未払い」と訴えられた際の唯一の証拠です。法律に基づき5年間保存してください。

誤解と理解

  • 誤り:「上司の承認がない残業代は払わなくていい」
    → 実際に業務を行っていた事実があれば、支払い義務が発生します(黙認は承認とみなされます)。勝手な残業をさせない労務管理が必要です。
  • 誤り:「休憩時間は仕事をしながらランチを食べている」
    → 休憩中は「業務から完全に離れる(指揮命令を受けない)」必要があります。電話番などをさせていると、それは休憩ではなく労働時間とみなされます。
  • 誤り:「うちはフレックスだから残業という概念はない」
    → メキシコ法には日本式のフレックス(月単位精算)の規定がありません。「1日8時間を超えたら残業」が原則です(LFT第59条の合意がある場合を除く)。

チェックリスト

  • 就業規則に「始業・終業時刻」や「休憩時間」を明記しているか。
  • 残業(時間外労働)をする際の「事前申請・承認ルール」を運用しているか。
  • 日曜日に出勤した従業員に対し、振替休日だけでなく「日曜手当(25%)」を支払っているか。
  • 勤怠記録(タイムカード等)と給与明細(CFDI)の内容が一致しているか。
  • 退職した従業員の勤怠データも、5年間保存できる体制になっているか。

まとめ

勤怠管理は、給与計算の土台であり、労務リスク回避の要です。「何時から何時まで働いたか」という客観的な記録(証拠)がなければ、会社は従業員の訴えに対抗できません。まずは正確な打刻と、残業の承認ルールの徹底から始めましょう。

本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース:

  • メキシコ連邦労働法(LFT)第58〜68条(労働時間・休憩・残業)
  • LFT第804条(保存すべき書類)
  • 連邦税法(CFF)第30条(5年保存義務)