労働契約の基本ルール|有期・無期契約とその違い
はじめに
メキシコでは原則として無期雇用が基準で、有期契約は客観的な必要性がある場合に限定されます。試用期間や研修期間の設定、終了手続き、清算(Finiquito)・解雇補償金(Indemnización)の考え方を押さえることが、労務トラブルの未然防止につながります。
サマリー
- 原則は無期契約。有期は「代替・季節・特定プロジェクト等」の客観的理由が必要。
- 試用期間:一般職最長30日/管理・専門職等は最長180日。更新乱用は無期転換リスク。
- 雇用契約終了時は清算(Finiquito)と必要に応じ解雇補償金(例:90日+勤続1年ごと20日等)、CFDI de nómina発行・IMSS/INFONAVIT手続を適正に。
詳細
1) 契約形態
- 無期契約(デフォルト):期間定めなし。更新を繰り返す有期よりも紛争リスクが低い。
- 有期契約:代替要員、季節業務、明確な終了時点のあるプロジェクト等に限定。
同一理由で短期更新を重ねると、実態で無期とみなされる可能性。 - プロジェクト/タスク完了型:業務完了時に終了。目的・期間・成果物を文書で明確化。
2) 試用期間・研修期間
- 試用期間:一般職は最長30日、管理・専門職・幹部候補等は最長180日。
- 研修期間:原則最長3か月(特殊職務は6か月)。
- 期間設定には書面合意と職務要件の根拠が必要。評価記録を残し、終了判断の合理性を担保。
3) 終了手続き・清算と補償金
- 清算(Finiquito):未払給与、比例配分の⼀時⾦(Aguinaldo・休暇・休暇プレミア等)を精算。
- 解雇補償金(Indemnización):不当解雇認定時の典型例として、
①90日分の統合日給(賃金+固定手当 等)
②勤続1年ごと12日分の統合日給
③登録賃金差額等、その他法定項目——の組合せが生じ得る(ケースにより異なる)。 - 手続実務:CFDI de nómina(最終支給)発行、IMSS/INFONAVITの資格喪失届、社内機器返却、守秘・競業条項の確認。
4) 就業規則(Reglamento)と登録
- 一定規模以上は就業規則の策定・登録が求められる(連邦和解登録センター)。
- 登録が不備だと、懲戒・シフト・安全衛生等の運用根拠が弱まり、紛争時の立証が困難に。
5) 代表的なケース
- 繁忙期の有期更新を連続:同一職務で客観的理由が弱い更新が続くと無期転換とみなされるリスク。
- 産休代替の有期:戻り予定日を契約に明記。復帰により終了。
- 試用180日(管理職)で不適合:評価記録・警告書面でプロセスを可視化し、終了判断の合理性を担保。
誤解と正しい理解
- 誤解:有期を繰り返せばずっと有期でいける。
→同一実態の反復更新は無期と判断され得る。客観的理由の有無が鍵。 - 誤解:試用なら即日終了しても補償は不要。
→合理的な評価プロセスと記録、清算(未払・比例配分)の支払い、CFDI発行は必須。 - 誤解:就業規則は社内配布だけで十分。
→原則登録が必要。未登録は運用リスク。
チェックリスト
- 契約形式(無期/有期/タスク完了)と客観的根拠を文書化しているか。
- 試用/研修の期間・対象職務を契約書に明記し、評価記録を保全しているか。
- 終了時のFiniquito計算、CFDI de nómina発行、IMSS/INFONAVIT手続きを速やかに実施しているか。
- 就業規則の登録と最新化(安全衛生・懲戒・シフト等)ができているか。
- 更新を多用していないか(無期みなしリスクの点検)。
まとめ
有期は例外、無期が原則。期間設定・評価・終了・清算の各プロセスを文書化と証憑で裏づけ、紛争時の立証力を高めることが肝要です。就業規則は登録まで含めて整備し、更新乱用は避けましょう。
本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
関連記事
リソース
- メキシコ連邦労働法(LFT)主要条文(契約・試用・補償金・就業規則)
