出張旅費(Viáticos)の税務処理|会社経費と従業員課税の基礎
はじめに
メキシコの出張旅費(Viáticos)は、会社の経費処理と従業員の課税に直接影響する重要な項目です。
経費として損金算入できるか、従業員にとって非課税とできるかは、社内規程の整備・CFDI(電子請求書)の取得・法定上限額の遵守といった条件を満たしているかどうかにかかっています。
本稿では、LISR(所得税法)やCFF(連邦税法)に基づく証憑要件と非課税範囲を、実務で迷いやすいポイントを中心に整理します。
サマリー
- 会社(法人税):CFDIの取得・非現金決済(2,000ペソ超)・事業関連性の証明が必須。食費は国内750ペソ/国外1,500ペソを超える部分は損金算入不可。
- 従業員(給与課税):社内規程の範囲内+証憑完備の部分は非課税。それ以外は給与として課税。
- 共通要件:CFDI、支払方法(銀行振込等)、社内規程、上限額の管理。
会社の視点(損金算入)
会社が出張旅費を経費(損金)として認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
- CFDI(電子請求書)の取得(宿泊費・交通費・食費など)
- 2,000ペソ超は非現金決済(銀行振込やカード)
- 事業関連性を証明できること(出張命令書・契約等)
- 食費:国内1日750ペソ/国外1日1,500ペソまでが上限。超過分は損金否認。
従業員の視点(給与課税)
従業員にとって旅費が非課税となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 社内規程に基づいて精算されていること
- CFDIをはじめとする証憑が揃っていること
- 規定された上限を超えない範囲であること
また、範囲を超えた部分や証憑不備がある部分は、給与として課税対象になります。
実務例
国外出張:食費2,000ペソ/日
- 1,500ペソまで:会社は損金算入可、従業員も非課税
- 残り500ペソ:会社は損金否認、従業員は給与課税
よくある誤解と正しい理解
- 誤解:規程を作れば全額非課税給与、損金算入 → 証憑と上限を満たす必要あり
- 誤解:CFDIがなくても経費にできる → CFDIは必須要件
- 誤解:IMSSや州税と同じ処理 → 完全に別制度として申告・管理
チェックリスト
- 社内規程に出張旅費ルールを明記しているか
- 全ての経費についてCFDIを取得しているか
- 2,000ペソ超の支払いは非現金決済か
- 食費が国内750ペソ/国外1,500ペソを超えていないか
まとめ
出張旅費を正しく処理するための基本ルールは以下の3点です。
- 社内規程を整備:旅費の範囲や精算方法を明文化。
- 証憑を揃える:すべての支出についてCFDIを取得し、2,000ペソ超は非現金決済が必須。
- 上限額を守る:食費は国内750ペソ/国外1,500ペソまでが非課税。超過分は給与課税扱い。
誤解されやすい「規程を作れば全額非課税給与、損金算入」という認識は誤りとなります。規程+証憑+上限遵守の3条件を満たして初めて非課税とされます。また、これらを欠くと会社側は損金否認、従業員は給与課税というリスクにつながりますので注意が必要です。
本記事は「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
関連記事
リソース
- LISR第27条・第28条(損金算入・不算入)
- LISR第93条(従業員の非課税所得)
- CFF第29条・第29-A条(CFDI要件)
- SAT年次通達(Resolución Miscelánea Fiscal, Anexos)
