会計データ保存年数と監査対応の基本知識
はじめに
メキシコで事業を行う企業にとって、会計データの保存は税務当局(SAT)対応の基盤です。税務法(Código Fiscal de la Federación:CFF)は、帳簿・証憑を原則一定期間保存することを義務づけています。本記事は保存年数と監査(auditoría)対応の基本ポイントを整理します。
サマリー
- 保存年限: 会計帳簿・財務諸表・CFDI(電子請求書XML)は原則5年、未解決の税務・訴訟等が関係する場合は最大10年(CFF第30条)。
- 提出形式: SATには電子形式(例:XML、XBRL等)で提示・提出(CFF第31条)。
- 実務: クラウド+外部媒体の二重保存と、年度・税目別のフォルダ整理で即時提示体制を構築。
詳細
1) 保存対象と期間(Plazo de conservación)
仕訳帳・総勘定元帳・財務諸表・CFDI(XML+PDF)・給与関連台帳等を最低5年間保存。争訟・更正決定の可能性、繰越税務効果等が残る場合は10年間を目安に延長管理(CFF第30条)。
2) 電子提出の前提(Entrega electrónica)
CFF第31条により、SATへの提出・提示は電子データが前提。会計システムからエクスポートした帳簿データ、CFDIのXML、必要に応じてXBRL等での管理・提出を想定します。
3) 監査対応の基本運用(Operación práctica)
- 即時提示: 年度別/税目別(ISR/IVA/給与)にフォルダを分け、要求に応じてすぐ出せる状態に。
- 二重保存: クラウド(例:Google Drive)と外部媒体(外付けSSD等)で冗長化。
- CFDI管理: 仕入・売上のXMLとPDFを紐づけ、月次で検証(conciliación)。
4) 保存対象データの整理(Organización de datos a conservar)
| 保存対象 | 保存年限 | 保存形式 | 担当部門 |
|---|---|---|---|
| 会計帳簿・仕訳帳 | 5年 | 電子/紙 | 経理部 |
| CFDI(電子請求書) | 5年 | XML+PDF | 経理部 |
| 移転価格文書 | 10年 | 電子 | 税務部 |
| 労務関連帳簿 | 10年 | 紙/電子 | 人事労務 |
| 銀行明細・契約書 | 5年 | 紙/電子 | 経理・法務 |
誤解と正しい理解
- 誤解: 紙の請求書だけ保存しておけば十分。
正解: 要求の中心は電子データ(XML等)。紙は補助(CFF第31条)。 - 誤解: 5年経過ならすぐ廃棄できる。
正解: 争訟・更正の可能性があれば最大10年の保存が安全(CFF第30条)。 - 誤解: クラウド保存だけで十分。
正解: 調査時の即時提示・災害対策のため、クラウド+外部媒体の二重保存が望ましい。
チェックリスト
- □ 帳簿・CFDI(XML+PDF)を原則5年、必要に応じて10年保存しているか?(CFF第30条)
- □ SAT提示用に電子形式で整理しているか?(CFF第31条)
- □ クラウド+外部媒体の二重保存を実施しているか?
- □ 年度/税目別の監査対応フォルダを整備し、即時提示できるか?
まとめ
会計データ保存は、SAT監査を見据えた電子データ前提の運用が鍵です。5年(状況により10年)の保存基準を守り、クラウドと外部媒体の二重保存、年度・税目別のフォルダ整備で即時提示が可能な体制をつくりましょう。
本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
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リソース:
- CFF第30条(保存義務)/CFF第31条(電子提出)
- SAT公式サイト
