メキシコ会計制度の全体像|日本の経理がまず知るべき基礎

1. はじめに

メキシコで事業を行う際、日本本社の経理担当者や駐在員がまず直面するのが「会計制度の違い」です。日本基準やIFRSと似ている部分もありますが、メキシコ独自のルールや運用があり、これを理解していないと誤解や報告の遅延につながります。

本記事では、メキシコ会計制度の基本枠組みを日本との比較を交えながら解説します。

2. メキシコ会計制度の基本枠組み

(1) 会計基準:NIF(Normas de Información Financiera)

メキシコの会計基準は NIF(金融情報基準) と呼ばれ、CINIF(メキシコ会計基準委員会)が策定しています。IFRSを強く参照しており、国際的に比較的近い内容ですが、一部独自ルールがあります。

(2) 財務諸表

  • Estado de Situación Financiera(貸借対照表/Balance Sheet)
  • Estado de Resultados(損益計算書/Income Statement)
  • Estado de Flujos de Efectivo(キャッシュフロー計算書/Cash Flow Statement)
  • Estado de Cambios en el Capital Contable(資本変動計算書/Statement of Changes in Equity)

(3) 会計年度

メキシコの会計年度(Ejercicio Fiscal)は、すべての企業が暦年(1月1日〜12月31日)を採用することが所得税法(Ley del Impuesto sobre la Renta, ISR)で定められています。例外は設立初年度や清算時のみで、この場合は1年未満の変則決算が認められることがあります。日本本社が3月決算の場合、報告スケジュールの調整が実務上の大きな課題となります。

(4) 帳簿と電子会計

メキシコでは帳簿は 電子会計(Contabilidad Electrónica) としてSAT(税務当局)へ提出する義務があります。日本の紙帳簿文化とは大きな違いで、XML形式での提出が標準です。

3. 日本との制度差

項目日本メキシコ
会計基準日本基準(J-GAAP)、IFRS一部採用NIF(IFRS参照型)
決算年度3月決算が多い暦年(1-12月)
帳簿保存紙・電子両方可電子会計XML提出義務
税務連携税務署へ法人税申告SATへ毎月電子提出義務

4. 実務でのポイント

  • 本社報告とのギャップ調整:決算期が異なる場合、四半期レポートや為替換算で混乱しやすい。
  • 電子会計対応:システム導入が必須であり、Excel処理だけでは対応不可。
  • 現地会計士との連携:日本本社のニーズを正しく伝え、NIFに準拠した帳簿作成が重要。

まとめ

メキシコ会計制度はIFRSに近いものの、日本基準とは異なる特徴があります。特に「暦年決算」「電子会計提出」の点が大きな違いです。日本の経理担当者は、まず全体像を把握し、誤解を防ぐことが第一歩となります。

本記事は、Miranexus Visionary Partner S.A. de C.V.(MVP)が「日本企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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