メキシコの福利厚生制度|法定福利と「節税効果」のある法定外福利の活用法

はじめに

メキシコの福利厚生は、法律で義務付けられた「法定福利(Prestaciones de Ley)」と、企業が任意で上乗せする「法定外福利(Prestaciones Superiores)」に大別されます。特に法定外福利は、単なるコスト増ではなく、税務上の優遇措置(Previsión Social)を活用することで、会社と従業員双方の税負担を軽減できる戦略的なツールとなります。本記事では、制度の全体像と賢い導入方法を解説します。

サマリー

  • 法定福利:社会保険(IMSS)、住宅基金(INFONAVIT)、年次賞与(Aguinaldo)、有給休暇など、全企業に義務付けられた最低ライン。
  • 法定外福利:食券(Vales)、貯蓄基金(Fondo de Ahorro)など。採用競争力の強化に使われる。
  • 節税メリット:特定の法定外福利は、現金給与と異なり社会保険料の算定基礎から除外可能であり、コスト削減効果がある。
  • 導入要件:全従業員に公平に適用すること(Generalidad)が、税務上の損金算入要件となる。

詳細

1) 法定福利(Prestaciones de Ley)

従業員を雇う以上、必ず提供しなければならないミニマム・スタンダードです。

  • Aguinaldo(年次賞与):年間15日分以上の給与支給(12月)。
  • 有給休暇・休暇手当:初年度12日〜。取得時に25%の割増手当。
  • 社会保険(IMSS)・住宅基金(INFONAVIT):医療、年金、住宅ローンのための拠出。
  • PTU(利益分配):利益の10%を分配。

2) 法定外福利と節税効果(Previsión Social)

現金で昇給する代わりに「法定外福利」で還元することで、税務メリットが生まれます。

項目内容メリット(節税効果)
食券
(Vales de Despensa)
スーパー等で使える電子カードを支給。
(上限:給与の40% または 1 UMA/日まで等)
IMSS算定基礎から除外され、会社負担の保険料を削減できる。
従業員の所得税も非課税。
貯蓄基金
(Fondo de Ahorro)
従業員積立と同額を会社が拠出。
(上限:給与の13% または 1.3 UMA/日まで)
同上。会社拠出分はIMSS対象外かつ非課税
福利厚生として最も人気が高い。
民間医療保険
(SGMM)
公的保険(IMSS)ではカバーできない高度医療に対応する保険。保険料は全額損金算入可能。
従業員満足度が高い。

3) 導入時の注意点(一般性の原則)

法定外福利を会社の経費(損金)として認めさせるためには、「全従業員に対して公平に提供する(Generalidad)」必要があります。「役員だけ」「特定の人だけ」に支給すると、損金否認されるリスクがあります(LISR第27条)。

誤解と理解

  • 誤り:「食券(Vales)は現金で渡してもいい」
    ダメです。 税務当局(SAT)に認可された「電子ウォレット事業者」を通じて支給しないと、損金算入も非課税も認められません。
  • 誤り:「福利厚生を厚くするとコストがかさむだけだ」
    → 現金給与を増やすと、それに連動してIMSS(社会保険料)や州税も増えます。「Previsión Social(食券等)」を活用した方が、トータル人件費を抑えつつ従業員の手取りを増やせます。

チェックリスト

  • 雇用契約書において、法定福利(Aguinaldo 15日等)が最低基準を満たしているか。
  • 食券や貯蓄基金を導入する場合、IMSS法第27条の免除要件(上限額など)をクリアしているか。
  • 法定外福利の規程(Plan de Previsión Social)を作成し、全従業員への適用ルールを明文化しているか。
  • 食券の支給業者(Monedero Electrónico)はSAT認定業者を選定しているか。

まとめ

メキシコの福利厚生は「法律で決まった義務」と「税務メリットのある戦略的投資」の2階建てです。漫然と現金給与を上げるのではなく、食券や貯蓄基金を組み合わせることで、賢くコストコントロールを行いながら従業員満足度を高めることが可能です。

本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。

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リソース:

  • 所得税法(LISR)第27条(損金算入要件)
  • 社会保険法(LSS)第27条(SBCからの除外項目)
  • SAT公式サイト:認定電子ウォレット業者リスト