メキシコにおける罰金・加算税制度の全体像
はじめに
メキシコの税務違反に対しては、罰金(Multa)・加算税(Recargos)・更新(Actualización)の3要素でペナルティが構成されます(根拠:CFF第21条、第70条以降、第81条・第82条)。本稿は入門レベルとして、制度の骨格と用語を最短で押さえることを目的にまとめています。
サマリー
- 三層構造:金額の再評価=インフレ調整→遅延利息→行為罰=罰金(CFF第21条・第70条以降)。
- 典型違反:申告・納付遅延、CFDI不備、帳簿・情報義務違反等(CFF第29条・第29-A条・第31条・第81条・第82条)。
- 証憑が肝:損金算入(LISR第27条)やIVA控除(LIVA第5条)は有効なCFDIと支払・関連性が前提。
制度の基本構造(用語の整理)
- インフレ調整(Actualización):未納税額を物価・指数で再評価し基礎額を現在価値へ調整(CFF第21条)。
- 延滞利息(Recargos):遅延期間に応じた月次利率で課される利息的負担(CFF第21条・第70条以降)。
- 罰金(Multa):行為に対する制裁金。違反類型別に幅が定義(CFF第81条・第82条)。
代表的な違反類型と観点
- 申告・納付遅延:ISR暫定・年次、IVA、給与源泉など(月次・年次)<遅延=更新+加算税+罰金>(CFF第70条以降)。
- CFDI関連:不発行・要件不備・タイムリーでない発行(CFF第29条・第29-A条、罰金は第82条)。
- 帳簿・情報義務:記帳不備、電子帳簿・DIOT等の未提出(CFF第31条・第81条・第82条)。
- 控除・控除税額の否認:LISR/LIVAの要件未充足(LISR第27条、LIVA第5条)。
計算の概観(順序のイメージ)
- 基礎の再評価=インフレ調整:未納元税額に指数を掛け、評価替え(CFF第21条)。
- 遅延利息=延滞利息:更新後の基礎に対し、遅延月数分の利率を乗じる(CFF第21条)。
- 行為罰=罰金:違反類型に応じて別建てで加算(CFF第81条・第82条)。
※本節は用語の関係を掴むための概観。具体利率や金額幅は年次・月次の公表値に依拠します。
よくある誤解と正しい理解
- 誤解:CFDIが無くても支払さえあれば損金やIVA控除ができる。
正しい理解:有効CFDI+支払済+課税関連性が前提(CFF第29条・第29-A条/LISR第27条/LIVA第5条)。 - 誤解:遅延は利息(加算税)だけで済む。
正しい理解:まず更新、その上で加算税、さらに類型次第で罰金が別途発生(CFF第21条・第70条以降・第82条)。 - 誤解:申告さえすればCFDI不備は問題にならない。
正しい理解:CFDI不備は罰金対象かつ控除否認リスク(CFF第82条、LISR第27条、LIVA第5条)。
チェックリスト(基礎編:現場用)
- □ 月次:ISR暫定・IVA・給与源泉・DIOTを期限内に申告・納付(該当)。
- □ CFDIの完全性:発行・受領・取消・補助(支払補足)まで一気通貫で管理(CFF第29条・第29-A条)。
- □ 控除前提:ISRはLISR第27条、IVAはLIVA第5条の3要件(有効CFDI・支払・関連性)。
- □ 遅延時:更新→加算税→罰金の順で影響把握し、速やかに是正(autocorrección)。
- □ 文書保管:GL・CFDI・契約・支払証跡を紐付け保存。
まとめ
メキシコのペナルティは更新・加算税・罰金の三位一体。まずは期限遵守とCFDIの完全性を守ることが最小コストの防御線です。社内では「CFDI/支払/関連性」をキーワードに、月次運用を定着させましょう。
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リソース
