財務諸表の公表義務と当局提出ルール|メキシコにおける基礎知識
はじめに
財務諸表(Estados financieros)は、企業の経営状況を外部に示す重要な資料です。メキシコでは、商法(Código de Comercio)、税務法(Código Fiscal de la Federación, CFF)、および各監督当局の規制に基づき、公表義務や提出ルールが定められています。本記事では、日本企業がメキシコで事業を行う際に理解しておくべき基本的な枠組みを整理します。
CFF第30条・第31条に基づく保存・提出ルール
- 保存義務:CFF第30条に基づき、会計帳簿・財務諸表は原則5年間保存(一定の場合は10年間)。
- 提出義務:CFF第31条により、SAT(Servicio de Administración Tributaria)への電子提出が求められる。
- 形式:XBRL形式やCFDI(電子証憑)と連動した電子データでの提出が一般的。
SAT提出期限と形式
- 提出期限:暦年決算の場合、翌年3月末までに提出(例:2025年決算は2026年3月末)。
- 提出方法:SATのポータルサイトを通じ、監査済財務諸表や補足資料をアップロード。
- 罰則:期限遅延や不提出の場合、数万ペソ規模の罰金や推計課税のリスクがある。
商業登記所・CNBV規制
- 商業登記所(Registro Público de Comercio):一定の会社は登記所を通じて財務諸表を公表する義務あり。
- CNBV規制:上場会社や金融機関は、証券取引委員会(Comisión Nacional Bancaria y de Valores)のルールに従い、四半期・年次財務諸表を開示。
- 対象範囲:中小企業(PyME)は原則として財務諸表公表義務はないが、監査や税務調査の対象になる可能性はある。
外部監査の基準
- 監査義務:売上高や資産規模が一定基準(例:売上高1億5千万ペソ超)を超える企業には外部監査が義務化される。
- 監査人の要件:登録会計士(Contador Público Registrado, CPR)が監査を行う必要がある。
日本企業が留意すべきポイント
- 本社報告との整合:日本本社への報告スケジュールとSAT提出期限を調整する。
- 監査対応:監査済財務諸表が求められるため、監査法人との連携を早期に開始。
- 実務ヒント:電子提出データの保存・バックアップを徹底し、監査や税務調査に備える。
まとめ
メキシコにおける財務諸表の提出義務は、商法・CFF・CNBV規制に基づき、企業規模や業種によって異なります。SATへの提出期限は翌年3月末、公表義務は上場企業や大規模企業に課されます。日本企業は、本社報告と現地提出を両立させるスケジュール管理と、監査対応を意識することが重要です。
本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
【関連記事リンク】
- 会計データ保存年数と監査対応の基本知識
- メキシコの外部監査制度|監査義務と監査人の役割
- 連結決算の必要性|子会社と本社の報告整合性
- 財務諸表の種類|貸借対照表・損益計算書・純資産変動表
- メキシコの電子帳簿と税務申告の関係性
【リソース】
- Código de Comercio
- Código Fiscal de la Federación(第30条・第31条)
- CNBV規制(Comisión Nacional Bancaria y de Valores)
(参照日:2025年9月)
