退職金・ボーナスの課税ルールと控除制度
はじめに
退職金(Indemnización / Prima de antigüedad)や年末ボーナス(Aguinaldo)は、メキシコ所得税(ISR)で特別な非課税枠が定められています。本稿は、日系企業の人事・経理担当者がまず押さえるべき「非課税枠・課税区分・証憑要件」の基礎を、条文番号つきで簡潔に整理します。
サマリー
- 退職金:90 UMA × 勤続年数まで非課税、超過は給与課税(LISR第93条)。
- Aguinaldo:30 UMAまで非課税、超過は課税(LISR第93条)。
- 証憑要件:CFDI de nóminaの発行・区分表示が必須(CFF第29条・第29-A条)。
- 実務要点:非課税/課税の区分をCFDIと台帳で一致させ、IMSS・ISN計算と整合。
退職金(Indemnización 等)の取扱い
退職金はLISR第93条により非課税枠=90 UMA × 勤続年数。枠超過分は給与としてISR課税。CFDI de nóminaで非課税部分と課税部分を明示(CFF第29条・第29-A条)。
- UMA:UMAは毎年更新。対象年度のUMAで非課税枠を算出。
- 社会保険・州税:IMSS・ISNの算入可否は支給性格等で異なるため、給与規程と整合させる。
年末ボーナス(Aguinaldo)の取扱い
Aguinaldoは30 UMAまで非課税、超過は課税(LISR第93条)。CFDIで非課税/課税の区分を明確化(CFF第29条・第29-A条)。
よくある誤解と正しい理解
- 誤解:「退職金は全額非課税」→ 上限(90 UMA×勤続年数)超は課税(LISR第93条)。
- 誤解:「Aguinaldoは全額非課税」→ 30 UMA超過分は課税(LISR第93条)。
- 誤解:「社内規程があればよい」→ CFDI発行+適正区分+支払実態が必要(CFF第29条・第29-A条)。
- 誤解:「非居住者条文(LISR第154条)を本テーマに直接使う」→ 本稿の非課税根拠はLISR第93条。非居住者課税は別テーマ。
事例
勤続10年の退職金支給。非課税枠=90 UMA × 10年。実支給が枠超の場合、超過分のみ課税としてCFDIに区分計上。Aguinaldoは支給額のうち30 UMAまで非課税、超過分は課税。
実務チェックリスト
- 最新年度のUMA額で非課税枠(退職金・Aguinaldo)を計算したか。
- CFDI de nóminaで非課税/課税の区分が正しく表示されているか。
- 源泉・IMSS/ISNの反映が給与台帳と一致しているか。
- 規程・合意書・決裁・支払証憑等のバックアップ文書が揃っているか。
まとめ
退職金は90 UMA × 勤続年数まで非課税、Aguinaldoは30 UMAまで非課税と規定されています(LISR第93条)。超過部分は給与課税の対象となり、CFDI de nóminaで非課税分と課税分を正しく区分することが必須です。さらに、IMSS(社会保険)やISN(州税)への反映を給与台帳と整合させることが重要です。実務では、毎年更新されるUMAに基づき計算し、証憑・規程・合意書などの裏付け資料を整えることで、否認リスクを最小化できます。迷ったときはまずLISR第93条と最新UMA、そしてCFDI区分を確認することが、安全な運用の第一歩となります。
本記事は、「日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤」を目的に作成しています。今後も実務に役立つ情報を発信してまいります。
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リソース
- LISR第93条(退職金・Aguinaldoの非課税)
- CFF第29条・第29-A条(CFDI要件)
