IVA還付制度の仕組みと申請プロセス入門
はじめに
メキシコの付加価値税(IVA)では、会社が仕入や経費で支払ったIVAが、売上で受け取ったIVAよりも多くなることがあります。この差額は「Saldo a favor(還付残高)」と呼ばれ、税務当局に還付を請求したり、将来の納税に充当することができます。本稿では、この還付の法律上の根拠と、基本的な手続きの流れを、簡単に整理します。
サマリー
- 法的根拠:還付請求はCFF第22条。仕入控除はLIVA第5条+CFF第29条・第29-A条(有効CFDI・課税関連性・支払済)。
- 0%税率の典型:輸出等はLIVA第2条・第2-A条で0%税率→Saldo a favorが発生しやすい。
- 基本フロー:Saldo a favor計上 → SAT電子申請 → 追加資料要求(Requerimiento)対応 → 還付 or 相殺。
- 処理期間:原則40営業日以内(CFF第22条)。
還付の前提(仕入控除の三要件)
- 有効CFDI(形式要件充足:CFF第29条・第29-A条)
- 課税関連性(課税売上に関連:LIVA第5条)
- 支払済(PPDの場合は補助CFDI<Complemento de pago>で支払事実を証明:LIVA第5条・CFF第29-A条)
申請フロー
- 月次IVA申告でSaldo a favorを確定(LIVA第5条)。
- SATポータルから還付申請(CFF第22条)。
- Requerimiento(追加資料要求)が来た場合、期限内に回答。
- 審査後、還付または他税目との相殺が実行。
必要書類(代表例)
- 受領CFDI(仕入・費用・経費)/発行CFDI(売上の控除計算上必要な場合)
- Complemento de pago(PPD取引の支払補足)
- 銀行明細・契約書・発注書等(実在性の補強)
- 貿易関連:Pedimento(輸入取引)、輸出インボイス等(LIVA第2条・第2-A条)
よくある誤解と正しい理解
- 誤解: 還付は自動で入金される → 申請が必要(CFF第22条)。
- 誤解: CFDIがあれば控除できる → 支払済と課税関連性が前提(LIVA第5条・CFF第29条・第29-A条)。
- 誤解: 0%売上は控除不要 → 0%売上は控除可で還付残高が生じやすい(LIVA第2条・第2-A条)。
チェックリスト
- CFDIの形式要件を満たしているか(発行者・受領者・税務レジーム等)。
- 支払済の証憑(Complemento de pago/振込明細)が揃っているか。
- 輸入はPedimentoの金額・通関番号がCFDI/帳簿と突合できているか。
- DIOTに反映される仕入区分の集計と一致しているか。
- Requerimientoの提出期限を管理しているか。
まとめ
IVAの還付(Saldo a favor)は、仕入控除が売上IVAを上回る場合に発生し、資金繰りを助ける有効な仕組みです。ただし、還付を受けるには以下のポイントを外さないことが重要です。
- 三要件の確認:有効CFDI/課税関連性/支払済(LIVA第5条、CFF第29条)。
- 申請手続き:CFF第22条に基づき、SATポータルで申請し、追加資料要求(Requerimiento)が来たら期限内に対応。
- 0%売上の扱い:輸出などは0%課税売上とされ、仕入控除が可能なため還付残高が生じやすい。
- 平時からの整備:CFDI、補足CFDI(Complemento de pago)、銀行明細、Pedimento(輸入)などを月次で突合し、DIOTとの整合を確保。
還付は「自動」ではなく「申請と証憑の裏付け」が前提です。正しいフローと日常的な証憑管理を徹底することが、迅速な還付の最短ルートとなります。
本記事は、『日系企業が安心してメキシコで事業を展開できるための知識基盤』を目的に作成しています。
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リソース
- LIVA(Ley del IVA):第2条・第2-A条・第5条
- CFF(Código Fiscal de la Federación):第22条・第29条・第29-A条
