メキシコ電子会計の実務│CFDI紐付け(UUID)とSAT監査対策

はじめに

「毎月の電子会計(Contabilidad Electrónica)は送信しているが、中身の正誤までは自信がない」
「SAT(メキシコ国税庁)の監査通知が来たら、どう対応すればいいのか?」

多くの日系企業で経理担当者が抱えるこの不安は、SATの監査システムが「全自動」であることに起因します。SATは提出されたXMLデータをアルゴリズムで解析し、矛盾があれば即座に指摘します。本記事では、この自動監査に対抗するための核心的実務である「UUIDの紐付け管理」と、リスクを回避するための具体的な運用フローについて解説します。

本記事のサマリー

  • 最重要義務:全ての仕訳にCFDIのUUID(32桁ID)を紐付けることが、経費の損金算入(Deducible)を守る唯一の手段である。
  • SATコード:自社勘定科目をSAT標準コード(Agrupador)へ正確に変換・マッピングしなければならない。
  • 修正対応:決算修正後は必ず「Balanza Complementaria(修正試算表)」を再送信し、申告データと一致させる。
  • 監査リスク:税務調査や還付請求時には、試算表だけでなく詳細な「仕訳帳(Pólizas)」の提出が求められるため、日々のデータ整備が不可欠。

1. なぜSATは「UUID紐付け」に執着するのか?

メキシコの電子会計実務において、最も時間と労力を要するのが「Asociación de UUID(UUIDの紐付け)」です。なぜSATはここまで厳格に紐付けを求めるのでしょうか。

自動監査のメカニズム

SATのシステムは以下のロジックで企業の不正やミスを検知しています。

  1. 企業が申告した「経費総額」を見る。
  2. その経費仕訳にリンクされている「CFDI(XML)」の金額を集計する。
  3. 「申告額 > CFDI集計額」の場合、差額は架空経費または証憑不備として、自動的に損金不算入(No Deducible)の候補とする。

つまり、たとえ正しい請求書を持っていても、会計ソフト上でリンクされていなければ、SATにとっては「存在しない経費」と同義なのです。

2. 経理担当者が徹底すべき3つの実務

① 毎日のUUIDリンク作業

Contpaqiなどの主要会計ソフトを使用する場合、手入力は避け、XMLファイルを読み込んで自動仕訳を作成する機能(Contabilizadorなど)を活用してください。

  • 売上・経費:発生時に必ずXMLを添付する。
  • 支払・入金:銀行仕訳を切る際、対象となるREP(領収書CFDI)を必ず添付する。

② 勘定科目マッピング(Agrupador SAT)の適正化

自社の勘定科目をSAT指定の標準コードに割り当てる作業です。ここでのミスは監査を誘発します。

  • リスク事例:「交際費(損金算入限度あり)」を「一般雑費(全額損金)」のコードに紐付けてしまうと、脱税の意図を疑われます。
  • 対策:新規科目の作成時は、経理マネージャーが必ずSATコードを確認するフローを確立してください。

③ 修正申告と連動したデータ再送信

年次決算(Declaración Anual)で数字を修正した場合、電子会計データ(Balanza)も必ず修正版を送る必要があります。

「税務申告書は修正したが、電子会計は当初のまま」という状態は、SATのデータベース上で不整合(Discrepancia)を生じさせ、招待状(Invitación)が届く直接的な原因となります。

3. Q&A:よくある実務上の疑問と誤解

現場で頻出する疑問に、SEO(検索意図)を意識した回答形式でまとめました。

Q1. 毎月SATに送るファイルに「仕訳帳(Pólizas)」は含まれますか?

A. 原則として含まれません。
毎月提出義務があるのは「試算表(Balanza de Comprobación)」のみです。ただし、税務調査(監査)や還付請求(Devolución)の際は、詳細な「仕訳帳」の提出が求められます。その時に慌てないよう、毎月の紐付け作業が必須なのです。

Q2. PDFの請求書があれば、XMLの紐付けは不要ですか?

A. いいえ、XMLの紐付けは必須です。
電子会計においては、PDFは単なる「参考資料(紙の印刷イメージ)」に過ぎません。法的効力を持つ原本はXMLデータであり、会計ソフト上でもXML(UUID)とのリンクが求められます。

Q3. 銀行振込の情報も入力する必要がありますか?

A. はい、監査対応時には必須となります。
仕訳帳のXMLスキーマには、決済手段(小切手番号、送金元・送金先口座)を記載するフィールドがあります。特に高額な取引や還付請求時には、資金フローの透明性が厳しくチェックされます。

4. コンプライアンス・チェックリスト

月次決算のクロージング時に、以下の項目を確認してください。

  •  UUIDリンク率の確認:会計ソフトのレポート機能で、リンク漏れの仕訳がないか(理想は100%)。
  •  EFOSチェック:紐付けたUUIDの中に、ブラックリスト企業(EFOS)発行のものが含まれていないか。
  •  キャンセル確認:有効として処理したCFDIが、実はサプライヤーによってキャンセル(Cancelado)されていないか。
  •  年次調整:確定申告(3月末)の後、4月20日までに「13ヶ月目のBalanza(決算整理後)」を送信したか。

まとめ

電子会計の実務は、「毎月期限通りに送信すること」だけではありません。真の目的は、「いつ監査が入っても、全ての取引とCFDIが完璧に紐付いたデータを即座に提出できる状態を維持すること」です。

この地道なUUID管理こそが、予期せぬペナルティや否認リスクから会社を守る最強の防壁となります。

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参照リソース:

  • SAT公式:Código Agrupador(勘定科目コード表)
  • Anexo 24(電子会計の技術仕様書)